刀の撰定


 或る程度、技術が向上してくると、誰でも真剣が欲しくなってくるものです。日本人であるならそれも当然で、現代ではいざ知らず、少なくても終戦までは日本刀 は日本男児の憧れの的だったのですから!
 況して居合道や剣道を志す者であれば、歴史的伝統と云うか、日本人としての血の流れと云うか、どうしても真剣を手に入れてみたくなるもののようです。
 私は居合道を始めて約50年になりますが、この間、手にした真剣は30振りを越え、現在も10振りの刀を所持しております。そこで、居合道についての記述は一服して「もし私が今、居合稽古用の真剣を求め るなら…」と云う前提で、日本刀について一考してみたいと思います。多少なりとも参考にしていただければ幸甚です。


刀を選ぶポイント
 私は刀を撰定する際、次のような筋道を立てて選ぶようにしております。

1.振り易いものを選ぶ。
 刀を振った時、その重さ(重心)が剣先から3寸(約10cm)下から刀身の中央辺りにあるのが、刀そのものの重量や長さに拘わらず、良いものであると私は思います。ただ「振る」と云っても、数週間も稽古をせずに振るのと、充分な稽古を行って振るのとでは大きな感覚の差がありますので心得てください。


2.刀の形状
(1)反りについて
 日本刀には「反り」がありますが、反りの深すぎるものは振った際、手の内で反 転し易く、(居合の稽古には)よくないように思われます。 反りが深いと見映えも立派で格好も良いのですが、それはあくまでも観賞用として、居合に用いるのはオススメできません。
 また、直刀に近い無反りの刀は、手の内での取りまわしに不便を感じますので、 これも敬遠しておきたいところです。
 もう少し具体的に記しますと、刃長2尺3寸の刀では6分以下、2尺5寸では8分以下が良いようです。先反り、中反り、元反りと反りにも種類がありますが、これは個々の好みによります。

(2)重量
 重すぎるのは取り回しが自由になりませんので避けた方が無難でしょう。しかし、逆に軽いものは振った気がしないせいか、どうしても無駄な力が入ってしまいがちなようです。私なども、軽い刀を使って両腕を痛めてしまった経験があります。
 また、試し斬りに用いるには重量の思いものが良いようです。
 目安としては800g〜1.3sくらいの、およそ1kg前後といったところでしょうか。
 幕末、桜田門外の変で井伊大老を斬ったとされる大阪丹波守吉道(新刀)を手にとって拝見しましたが、長さ2尺3寸3分、重量1.2sほどであったように記憶して おります。

(3)長さ
 居合道の流派によっては「2尺3寸を常寸とする」「当流においては2尺」と定められておりますが、現在出版されている本には「自分の身長から90cm引いた長さ」 、「刀を右手に持って床に下げ、剣先が床に着く程度」と記されています。  また古書では「御手 に叶はば一寸長かる可し」とありますが、実際には腕の長い人短い人が居りますので、結局は本人次第という事になります。
 只云えることは、普段2尺5寸の刀を使っている人が暫く休んだ状態で使うと「長過ぎるかな」と感ずると思いますので、慣れや、その時の感覚によっても多少違うことも覚えておいてください。
 「剣先を床に立て、柄頭が臍の高さにあるのが良い」(塚原朴伝)の説もありますが、これは柄の長短が関わってきますので、私としては「柄を握って剣先が床に着く程度」がよいように思います。撰定の方法としては合理的ではないでしょうか。
 また、ズボンの股下の長さを基準にする方法もあります。

(4)剣先の形
 他項で多少、触れましたが、剣先の形は中切先、猪首切先、小切先が良く、大切 先や横手のない切先は避けた方が無難です。

(5)造り込み
 鎬造りが一般的で扱い易いと思います。平造り、片切刃、長巻直し等は観賞用と考え、居合では敬遠すべきかと思われます。

 刀の形状については古書籍にも種々書かれておりますので、抜粋して後記します。


3.制作年代
 関ヶ原の合戦(慶長5年)以前の刀を刀剣界では「古刀」、それ以後幕末までの刀を「新刀」、その後明治までの刀を「新々刀」と云って区別しております。
 どの年代の刀を選ぶのかは個人の好みによりますが、制作年代ごとにそれぞれの特徴があります。

(1)古刀(慶長5年以前)
 古刀は一般に鉄色が良く、地鉄も冴え、焼刃の働き等も盛んに入っておりますので、生産者・生産地も判別し易く、ローカルカラーが豊かであるとされています。また、手持ちが良く、扱い易いものが多いことから、(私も含め)多くの愛好者がいるかと思います。
 欠点としては無銘、あるいは大磨り上げ無銘が殆どで、その上、研ぎ減りで心鉄の出ている物があること。鍛え過ぎというケースも見られます。これらの欠点は、長期に渡る時代の中で出てきたもので止むを得ませんが、それだけ安価に手に入ることもあります(もちろん、ここでは市場に出回っている物について述べている訳ですが)。
 無銘と云っても有名な相州正宗、貞宗、江義弘等、国宝・重要文化財クラスの刀は全部無銘であり、「在銘であれば偽物」とさえ云われておりますが、同銘の刀鍛治など何人もいますので、そのような人の在銘刀を偽物と云う訳にも参りません。あくまでも、購入の際の参考と考えてください。
 大磨り上げ無銘刀は南北朝以前の刀に多いところから、戦争の絶えなかった時代は長い刀が多く生産されたのが、その後、鉄砲が戦闘に使用されるようになってから 銘がなくなるほど磨り上げられて短くされたようです。
 特に織田信長は備前光忠の愛好者で、数振りを所持していたそうですが、光忠の「光」の中程まで、全部磨り上げたとも云われております。
   また、徳川時代には2尺8寸以上の刃渡りの刀が生産禁止とされたようであり、 これに加えて、大、小名が参勤交代その他で駕籠に乗る機会が増えたため、長い刀では邪魔になり更に短く磨り上げたと考えられます。
 私自身は、刃が無くなるほど研ぎ減った物を除いて、古刀、それも無銘刀に惹かれます。無銘の刀には「偽物」はありませんし、平安から室町時代に至るどの時代の制作か、どんな武士の経て現在、此処にあるのか、更にはどんな戦闘場面に遭遇しているのか、そのような歴史的ロマンが一杯詰まっているからです。
 自分の刀の過去を想像しつつ居合の稽古を行うのは、理屈抜きで愉しいものなのです。
 余談ではありますが、私の所持する室町末期の古刀・宇多國次(2尺4寸2分)は、研ぎ減りしたかと思われるほど細身で重ねも薄いもので、物打ち辺りの棟に打ち込み傷があります。
 細身ですが、実践に使用された事は、この傷をみれば解かります。このような打ち込み傷を「誉れ傷」と称して、好んで求める愛刀家もいるようです。
 古刀に関しては、あまり傷にこだわらない方が良いかもしれません。


(2)新刀(慶長5年以降、徳川時代)
 新刀の特徴は「反り」が少ないことで、初期作の刀は南北朝期の大太刀を大磨り上げにしたような感じのものですが、中には無反りと云うか直刀に近い物、また肥前刀のように反りのついたスタイルの良い物などより取り見取りと云ったところです。
 長さは2尺5寸くらい迄ですが、私の見た物の中には2尺8寸ほどの長い物が一振りありました。2尺から2尺4寸くらいの刀が最も多く制作されたようです。
 磨り上げについては、銘の中程迄のものを何振りか見ましたが、多くは銘の一番下の字まで磨り上げるようです。大磨り上げ無銘は見たことがありませんので、制作者の見当はつき易いと思います。
 室町時代から鉄の流通が良くなったらしく、外国からの輸入もあり、素材によるローカルカラーは無くなったと云えます。その為か作刀は個性的になり、スタイルは勿論、焼刃も古刀には見られない簾刃、富士見西行、数珠刃など、技巧的なものが多くなっております。
 従って古刀では山城伝、大和伝、相州伝などローカルカラーで呼ばれていましたが、新刀では忠吉系、法城寺一派、長曽根一派、助広系などと、個人の名を冠するようになりました。
 新刀では徳川三百年の泰平の時代故か、流石に研ぎ減り、肌荒れと云った刀は少なく、反面偽銘の物が多いので在銘物は要注意です。


(3)新々刀(幕末刀)
 長い歴史の中で動乱期に作られた刀は、刀匠も「折れず、曲がらず、よく斬れる」ことを念頭に研究して作刀したようで、良い物が多くなっています。
 源平合戦、蒙古襲来、南北朝、戦国時代、幕末動乱期、第二次世界大戦などの前後がそれに当たります。
 新々刀はスタイルでいえば古刀のように反りの強い物もあれば、新刀のように反りが少なく、無反りに近い物もあります。しかし、重ねが厚く、研ぎ減りも更に少ないので長さの割に重いのが特徴と思います。
 新刀よりも更に傷が少なく、肌は綺麗です。然し、矢張り偽物が目につきますので銘には要注意です。


(4)現代刀(明治以降)
 明治になって「廃刀令」が公布され刀の製作は禁止されましたが、その後日清、日露戦争が勃発し、製作が再開されました。
 昭和に入って、第一次世界大戦、満州事変、太平洋戦争と戦乱が連続で勃発し、日本刀の高くなりましたが、その多くが「昭和刀」と名付けられ、粗悪品の代名詞のようになりました。
 折り返し鍛練もせず、素延べの鉄に焼き入れ物が多く、とても美術品とは云えません。これらの刀の中心には桜花のマークが刻印してありますので一見してそれと解ります。
 この手の刀は戦後殆ど処分されたはずですが、散見することもありますので、昭和刀を求める場合は要注意です。勿論、登録証は交付されておりません。
 昭和16年以前に作られた物には良い物が沢山ありますが、長さは2尺3寸止まり、多くは2尺1〜2寸です。
 これは軍人が腰に下げて持ち歩くので、長い刀では鞘が地面に擦ってしまうからだと思われます。2尺3寸以上の刀は刀匠の入魂の作ではないかと私は考えております。
 終戦から昭和28年まで刀の製作は禁止されましたが、その後解禁となり、製作が再開され、登録して販売できるようになりました。人間国宝も制定され、各刀匠は奮起して製作すると共に、日本刀製作の伝統を守り後代に伝えるために努力しているようです。
 然し、何と云っても刀の製作に向く鉄が以前にも増して少なく、各刀匠は古い鉄製の鍋、釜、鋸、民家の古い角釘などを集め、これを現在の鉄に混ぜて製作するなど、苦労しているようです。
 それでも戦闘による大量消耗の時代ではないので、端的にいえば刀余りの時代と云えるかもしれません。だからこそ居合人口を増加するいい機会と云っても過言ではないと思います。


4.入手価格
 拵え付きと云う条件ですと、古刀で75万円以下、新刀、新々刀は50万円前後、現代刀は中古品で40万円以下というのが目安です。
 白鞘のみで拵えが無ければ価格は下がると思いますが、後で拵えを作るとすれば最低で25万円はかかりますので、拵え付きを求めた方が安上がりでしょう。
 繰り返しますが、居合に用いる刀は鑑賞などに用いたり、伝家の宝刀とするような立派な物は必要ありません。磨り上げや多少の傷、研ぎ減りのある方が惜し気なく使用できます。
 出来れば刀剣に関する本を一冊読んで、ある程度の知識を得てから求めた方が納得のいく買い物ができると思います。


5.拵え
 拵えは外出、戦闘の場合にそれぞれの現場にあった外装の事を云います。
 一般に刀を家に置いている場合は、白鞘に入れて油を引いて保管します。それで白鞘を別称休め鞘、油鞘、刀の浴衣などと云っております。
    従って白鞘の刀で戦うことはありません。居合でも白鞘での稽古はありません。
 拵えについては長文になりますので、別にまとめて後記します。


  6.その他
 この項では古い書籍や矢田氏に縁のあった先生方の所持刀、その他について知るところを簡記します。多少の参考になると思います。


(1)書籍

「剱尺記」、「刀剱長短論」
 この二冊は幕末、講武所頭取出会った窪田清音の著作で、剱尺記は刀剣や竹刀等の長短における利害関係を論じたもので、刀剱長短論は刀の長短は各人の身体と力の強弱、技術の巧拙で定めるべきであると論じたものです。
   幕末の人の著作なので文章そのものに戸惑う事もあるかもしれませんので、現代文に書き直し、要旨のみを記述します。二冊とも内容に同様の部分が多いのでまとめてあります。
要旨
・人には身長の高低、肥痩、力の強弱、技術の巧拙などの差があるので、それによって刀を選ぶことが第一条件である。

・刀にも長短、軽重、肥痩があり、重量は剣先・中程・鍔元のどの部分に掛かるかを考え自分に合ったものを選ぶこと。

・刀は一寸長ければ一寸の利があるけれども、身に余る長い刀は子供が長い木刀を振り回せないのと同じで逆に不利になる。しかし教えに従ってよく稽古を重ねれば、それだけ長い刀を扱う事が出来る。
 源義経は身長の低い人と聞いているが、刀は二尺六寸余を用いたとの事である。当伝(田宮流)の先師が定めたところは、身の丈五尺五寸(約167cm)以上であれば三尺三寸の刀でも稽古次第で、抜き差しもほかの動作も不便ではないとされている。  私の身の丈は一般的で、力量も無かったが、三尺余の重い刀を作らせ、朝晩稽古をしたところ数年で自在に扱えるようになり、常時二尺八寸、九寸の刀を使用するようになった。
 しかし、刀はあらゆる場所で使用するものであるから、刀の長短に拘らずよく使いこなすことである。

・二尺以下の刀は片手で用い、二尺以上の刀は両手を使うこと。
※現在居合道では抜き付けまでは片手、後は両手を用いますが、鞘離れまでは剣先は脇腹にあり、抜けている刀の臍から先の長さは二尺前後となるので、「勝負は鞘の内」の言葉と通じるものがあると勝手に愚考しております。


「剣法略記(窪田清音著)」
 刀は作の良否に関せず、先ず折れ曲がることの無きを主とし、刃味の良きものを撰ぶべし。長短、幅、形、刃肉の厚薄などにより優劣あり。
 良工の作でも、使う人の分量に適さずば長きも短きも何の用うる所あらんや。その人の分量に適せば即ち無上の剣と知るべし。 ※「自分に使いやすい物を選べ」と云う事と思います。
 剣を選ぶにその大略を云へば、幅広きもの、沸えの多い物、波紋の深い物、反りの深い物、反りのない物、長すぎる物、短すぎる物は古刀、新刀に拘わらず好むべからず。刃肉の薄い物は用いるべからず。疵はその場所によって嫌うべからず。
 以上を心に留めて詳細に鑑定すべし


(2)先生方の使用された刀の長さ

 流  祖  林崎甚助重信  三尺二寸余
 十三代  山川久蔵幸雄  二尺八寸
 範  士  檀崎 友彰    二尺六寸五分
   〃    木村 唯次    二尺三寸七分
   〃    橋本 正武    二尺五寸
   〃    山下 貞利    二尺七寸
                      (敬称略)
 以上、記憶するところを記しました。範士中倉清先生は二尺八寸を抜いておられたと記憶しますが定かではありません。
 残念ながら十七代細川義昌先生、十八代中山博道先生の刀の長さは不明です。
 只、中山博道先生が注文打ちしたとされる刀、美濃兼道作 二尺五寸、重量1.6kgを拝見したことがあります。
 代を継がれたり、範士になられた先生方は矢張り技量が優れておられる為に、長刀を抜くことができたと推察します。
 大村、橋本両範士は小柄な方だったので他の先生方よりは短い刀を用いておられました。
 全剣連が指定する木刀は刀身部二尺五寸、柄部八寸の計三尺三寸(約100cm)ですので、こういう事も参考になると思います。



居合に用いる刀の拵え
 居合に用いるということもあり、粗末なものでも良いのですが、しかし吟味すべきところは確り吟味すべきかと思います。
 白鞘の刀に拵(こしら)えをつけようと思われる方、或いは拵えを作り変えようとする方に、参考までに「私が造るなら」という前提で記していきます。
1.小道具
 刀の拵えには付属すべき金具があります。鍔、縁、頭、目貫、ハバキ等がそれです。
(1)ハバキ
 まず始めにハバキは銅製のものが丈夫で長持ちするようです。銀は、丈夫さで言えば銅の次くらいですが、鑑賞を視野に入れると銀製も宜しいでしょう。
 また、二重ハバキは見た目には良いのですが、実用的には不向きです。

(2)鍔
 象嵌(ぞうがん)のない鉄鍔が良いと思われます。
 象嵌に用いる金属は金、銀、銅、赤銅、真鍮等、柔らかなものですから、使用している内に知らず知らず指などが当たり、擦り減ってその価値を落としてしまいますので、そのような象嵌鍔は観賞用とし、使用は控えた方が良いでしょう。ただし、既に擦り減っていたり、象嵌の落ちてしまったものについては惜しみなく使用して良いかと思います。
 同様な理由から、鉄以外の金属で出来た鍔も、鑑賞に耐えるようなものであれば敬遠した方が無難です。古くから大切にされてきた文化遺産ですから、私達もまた、立派なものは後代に引き継ぐべきでありましょう。
 「模様がないのは寂しい」と思う人は、透かし鍔、鋤彫り、毛彫り等が宜しいかと思います。

(3)縁・頭
 柄につける金具で、本来ペアになっているものですが、長い年月の間に離れ離れになってしまったものもあります。
 これも矢張り鉄製をお勧めしますが、ペアが崩れているもの同士「再婚」させて使用するもの面白いものです。縁だけの場合には、頭は水牛の角を用いている例が古来数多くありますので、この方法もあるかと思われます。

(4)目貫
 必須ではないものの、無いと寂しいものです。打抜いたもので良いと思います。

※ 小道具は刀屋ばかりでなく、中古品リサイクルショップ等にも意外と良い物がありますので、機会があれば覗いてみると良いでしょう。
 中には拵えだけを売っている場合もあります。鞘、柄などが風化して壊れかかっていたりしますが、鍔を除いて一作物が多いので、むしろ安価に求めるのも一方法です。


2.柄
 柄は手の内の定まる重要な部分なので、十分に吟味された方が良いと思います。
(1)長さ
 古くは7寸5分とされ、それを超える長さのものを長柄刀と呼んでいたそうですが、現在は人の身体も大きくなり、それに従って手自体も大きくなっておりますので、流派で定められている場合以外は気にする必要はないでしょう。
 故・檀崎範士の柄は1尺ありましたし、私も9寸5分(刀身は2尺6寸5分)のものを用いていたことがあります。最終的には刀身とのバランスで定めるのが良いと思います。
 因みに全剣連で定められた木刀の長さは総丈1メートル(3尺3寸)、刀身2尺5寸、柄長8寸です。まずは木刀を握ってみることで、自分に適合する長さを判断するのがベストでしょう。

(2)太さと形
 刀が重い場合、柄は太い方がバランスがとれて楽に使えます(※個人差あり)。ただし、縁、頭との兼ね合いにもよります。
 剣先に重みを感じる刀には、柄頭の方に鉛を入れることでバランスがかなり良くなります。柄巻師の柄一さんによれば、鉛は最高50グラム迄入れることができるそうです。

(3)柄糸
・木綿糸
  安価ですが、手垢・手油等が付着すると滑り易くなるのが欠点です。
・絹糸
  木綿糸より丈夫で手触りも良く、また上品なのでお勧めです。
・皮
  種々の動物の皮がありますが、皮だけに丈夫です。色も多様で好みのものを選ぶことができます。
  私は鹿の背皮を使っておりますが、他の皮と違い、手の内が汗をかいても滑りにくいために重宝しております。尤も、少々値は張りますが。

(4)巻き方
 柄糸の巻き方だけでも30数通りあるそうですが、居合で使用するには大別して「ヒネリ巻き」「平巻き」「片手巻き」の3通りが適しているように思います。

・ヒネリ巻き<写真1>
 ヒネリ巻きは糸と糸とが交差する部分で一ヒネリしますので、糸のゆるみがなく確(しっか)りします。見栄えも良いため、一般的にも良く見られる形です。
 また、柄そのものがヒネった分高くなり、指の掛かりも良くなる一方、全体として太くなったという感覚があります。
 木綿・絹糸で巻くには滑りも少なく、手当たりも良いでしょう。しかし、皮糸の場合には糸の交差した部分が突起物のような感じとなり、手当たりが痛く感じられることがあります。尤も、皮が柔らかくなって手に馴染んでしまえば指の掛かりも良く、手の内の締まりも良くなりますのでお勧めです。

<写真1>


・平巻き<写真2>
 糸が交差した部分をヒネらず平らなまま巻く方法で、ヒネリ巻きのように突 出部分がなく、手当たりの良いものとなります。皮糸を用いた際、ヒネリ巻きだとど うしても持ち辛くなる人にお勧めです。

<写真2>

・片手巻き
 柄の両端をヒネリ巻きで、中央部分を一方的に巻きます。非常に実戦向きの 巻き方だそうです。
 別名「天地菱」とも言い、柄の前後に「菱形(ヒネリ巻きの際、糸が巻かれていない部分にできる隙間)」を2、3個入れ、中央は片手巻きとします。皮で巻くと使い心地が大変良くなります。


3.鞘
 鞘は、その人の技量によって使用耐久時間に大きな差ができます。
 最も痛みやすいのは鯉口から約20pまでの刃方の部分と、鐺(こじり)ですから、予め補強しておくのが良いかもしれません。
 縁金は金属製が多いですが、刀を痛めてしまう可能性があるため、黒水牛の角製が良いでしょう。
 また、鯉口から約20pまでの刃方の(刃が直接当たる可能性の高い)部分も鞘の内部を削りやすく、割れて手の内を切る恐れがありますので、矢張り水牛の角を短冊型に埋め込んでおいた方が良いかと思います。
 栗形には「シトドメ」と云う金属製の装飾品をつけない方が良いでしょう。下緒の出し入れに引っ掛かってしまうことがあります。私も「平戸」と云うシトドメなしのものを使用しております。
 鐺には、できれば金具をつけるべきでしょう。実戦上は半太刀拵え、突兵拵え等がありますが、それらは費用が嵩(かさ)みますので、鐺に被せる程度のもので良いと思います。
 写真で見た限りでは、中山博道は突兵拵えを使用していたようです。また、橋本正武範士も同様でした。
 鐺用の金具には様々なものがありますが、鐺を痛めぬようにするのが目的ですから、あまり装飾性を追及せずとも良いでしょう。檀崎友彰範士も、銀製の装飾のないものを使用しておりました。
 小柄、笄(こうがい)は使用しませんので、櫃穴(ひつあな)は必要ありません。逆角(かえりつの)も必要ではないでしょう。これらは観賞用の刀に用いれば見栄えがしますが、費用が嵩みますし、居合の稽古には不必要にして益なしです

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