『魔法使いの弟子(エピローグ2)』 青く輝く銀色の翼竜 “正宗(まさむね)”。 それは普段は細身の長剣に変化しているドラゴン族の末裔の 名前です。 正宗くんの飼い主は“銀の魔法王・セフィロス”という 銀色の長い髪の、 とても綺麗な魔法使いでした。 正宗くんは、自分と同じ “碧の瞳”と、“縦に裂けた瞳孔”を持っている セフィロス が大好きでした。 ところが そんな大好きなセフィロスが、 “赤の大魔道士”の館から帰ってきてから どことなく元気がありません。 多分普通の人にはわからないでしょうが、 ずっとずっと長い時間をセフィロスの傍で過ごしてきた 正宗くんには、そのことが痛いほど分かりました。 理由はわかっています。 あの“蒼の大賢者”さんに“弟子”が出来たからなのです。 しかもただの弟子ではなく、 “一生一緒に生きていく盟約” をかわした、“恋人同士”なのだそうです。 “蒼の大賢者”さんは 明るい金色の髪に真蒼な瞳、 白い肌にほっそりと華奢な肢体で、 それはそれは綺麗な姿をしていました。 その“綺麗な姿”はどこかセフィロスに似ていて、 正宗くんは、大賢者さんのこともとても気に入ってました。 2人並んで立っている姿は1枚の絵画のようで、 とてもお似合いのカップルだと正宗くんは思っていたのです。 そんな“大好きな2人”の間に、突然出てきたのが なんだか得体の知れない“伝説の騎士”でした。 遠い昔、古代の精霊のまじないをその身に受けたとかで、 “一切の魔法や呪いが効かない”うえ、 “不死身に近い肉体”を持っている凶悪で野蛮な男を 正宗くんはとても軽蔑していました。 だってそうでしよう? 魔法ひとつ使えない“魔法使いの弟子”なんて聞いた事がありません。 それににドラゴン族である正宗くんは、 どうにも“騎士”という人種が好きにはなれませんでした。 騎士の武勇伝と言えば、 “ドラゴン退治”のお話が定番でしたし。 そんなわけで、 「大好きなセフィロス」に、 「寂しい思い」をさせている、“伝説の騎士”のことを、 正宗くんはとても疎ましく思っておりました。 (・・・・・騎士さえいなくなれば、 大好きなセフィロスは、大好きな“蒼の大賢者”さんと一緒に ずっといられるのに・・・・) 自分の大好きな綺麗な人たちが、 目の前で一緒に笑っていてくれたら、 それはどんなに素敵なことでしょう。 (・・・よしっ・・・!) 正宗くんは、心密かに決心しました。 『銀王・セフィロスにナイショで、蒼の大賢者さんのお城に行って ワケのわからない騎士を倒して、大賢者さんを攫ってくる』 ・・・それはとても素敵な思いつきだと正宗くんは思いました。 “伝説の騎士”がどれだけ強いか分かりませんが、 でも不意打ちをかけて、 かぎ爪と牙で引き裂いて頭を食べてしまえばなんだか倒せそうな気がします。 (そうと決まれば早速・・・・) 正宗くんは、 いななきを上げると、 巨大な白銀の翼を大きくはためかせました。 あたりの岩や木々がぐわんと震えました。 正宗くんの羽ばたきは力強く、 飛行速度はどんな魔道の道具よりも素晴らしいものでした。 “天駆ける籠”の何倍も早く移動できる正宗くんは、 意気揚々と“西の果てのお城”に向かおうとしました。 「やめておけ」 その時、突然低く響く声がしました。 しゃらりと細鎖の音も聞こえました。 ・・・・・・・“銀の魔法王”セフィロスです。 銀色の長い髪に、黒いマントをなびかせた長身の 魔法使いは、ゆっくりとドラゴン族の末裔の巨躯の前に歩を進めました。 正宗くんは吃驚したように、セフィロスを見つめました。 (・・・・・なんでわかったの・・・・・?) 正宗くんは、人間の言葉はわかりますが 人間の言葉を話すことは出来ません。 声帯がそのように出来ていないからです。 代わりに小さく 「ほぅ」と息を鳴らしました。 「お前の気持ちはありがたい。 が、余計なことをするな。」 静かに銀王が言いました。 くぅ〜ん・・・と、正宗くんは鼻先を下げて小さく啼きました。 なんでなのでしょう? セフィロスは、“蒼の大賢者”さんが大好きなはずなのです。 出来れば“伝説の騎士”とやらの代わりに 大賢者さんとずっと一緒にいたいに決まっています。 正宗くんは碧色の瞳でじっとセフィロスを見つめました。 セフィロスは正宗くんに近寄りました。 指の長い、大きな手が正宗くんの顔にそっと触れました。 「私は今、幸せなんだ。」 突然セフィロスが思いもかけないことを言いました。 正宗くんは目を細めて銀王を見つめました。 「我々は、このまま静かに消えていく存在だと思っていた。」 静かなセフィロスの言葉。 正宗くんは不思議そうな瞳でセフィロスを見つめました。 「“人”、そして “魔法使い”・・・我々は長く生きすぎたと思っていたがな・・・」 セフィロスはゆっくりと瞳を閉じました。 「だが、この世界はどうやら私たちを認め、受け入れたらしい。」 誰よりも長い刻を生きる偉大な魔法王。 今は滅び、消えた古代の精霊や神の存在を知る唯一の存在・・・ “魔法王”は、唯一孤高の存在だったのです。 そしてそれは、正宗くんも同じでした。 “空を翔るドラゴン族唯一の生き残り”。 正宗くんは、鼻先をセフィロスにそっと押し付けました。 「人と・・・魔法と・・・“魔法使い”は、 この世界で共に生きていく・・・・・・ 私と・・・お前もな、“正宗”。」 セフィロスの言ったことは、 正直、正宗くんにはよく分かりませんでした。 でも、 この世界で、正宗くんとセフィロスはずっと一緒なんだと思うと、 それは不愉快な気持ちでは在りませんでした。 【続く】 戻る |