関連書籍(攻略本と小説版)について


・攻略本について(↓)
・小説版について(↓)
 ・小説版『真昼に踊る犯罪者』(↓)
 ・小説版『ブラウン通り三番目』(↓)
 ・小説版『巣作りドラゴン』(↓)

 ・小説版『南国ドミニオン』(↓)
 ・小説版『ダンシング・クレイジーズ』(↓)
 ・小説版『王賊』(↓)
 ・小説版『ウィザーズ・クライマー』(↓)





 《攻略本について》

リンク:
ターニングポインツ/イーグルパブリシング
・ODYSSEUS(http://www.odysseus.co.jp/ ……サイト閉鎖?)


対象作品発売日『攻略スペシャル』『攻略王』
葵屋まっしぐら2000年2月25日12巻(※未購入)9巻6-13頁
うえはぁす2000年9月22日19巻66-77頁12巻12-17頁
海賊王冠2001年4月20日27巻(※未購入)−−
真昼に踊る犯罪者2001年10月26日32巻116-123頁19巻51-59頁
アルフレッド学園魔物大隊2002年7月12日41巻20-39頁25巻108-119頁
ブラウン通り三番目2003年3月28日48巻2-29頁24巻84-92頁
LEVEL JUSTICE2003年12月12日57巻38-67頁30巻(※未購入)
巣作りドラゴン2004年6月25日63巻28-51頁31巻(※未購入)
南国ドミニオン2005年2月18日71巻2-25頁35巻84-98頁
Dancing Crazies2005年9月30日78巻10-35頁−−


 ソフトハウスキャラ作品を含め、数多くのPCゲームについて攻略情報を市販書籍形態で定期的にリリースしているシリーズとして、『パソコン美少女ゲーム攻略スペシャル』(ターニングポインツ編著、イーグルパブリシング)『攻略王』(ODYSSEUS)の二種類が代表的な存在です。これらは通常のプレイでは知り得ないと思われるデータや内部フラグに言及している場合もあり、各メーカーからの資料提供を受けてそれを利用して執筆しているようですので、攻略情報としての信頼性は高いと思います(――ただし、たまに誤記誤植が見出されるので、常に鵜呑みにできるわけではありません)。キャラ社のように攻略内容の複雑な作品については、かなり多くの紙幅が充てられるのが通例ですし、またゲーム本編では見られない作中キャラクターの全身画像(レアです!)を掲載していたり、他(社)作品の情報を得る機会になったり、場合によっては時代を感じるよすがになったりもしますので、手許に置いておいて損にはならないと思います。最近では、『攻略スペシャル』の記事で葉木崎姉妹に「はざき」とルビが振ってあったのには驚かされたりしました。「はざき」じゃないのか! 実在する固有名詞(名字、地名)じゃないようなので、どう読ませてもよいのですが。

 二種類の攻略本のどちらがよいかという問題はありますが、特にどちらをお薦めするということはありません。『美少女ゲーム攻略スペシャル』の方は、『真昼』のもの以降は全ページがカラーになっていますが、そのぶんやや割高(1500円)ですし、書き込みがしづらいこともあります。一作品あたりのページ数もこちらの方が多めで、各作品の原画家やライターなどの付随的情報も記載されていますが、キャラクター紹介文や立ち絵などの画像が入っているためにページ数が増えているという向きもあり、攻略情報の質そのものが決定的に違うということはありません。これに対して『攻略王』は、無駄な情報を省略してできるだけ多くの作品を収録するというコンセプトのようです。コンパクトですがフルカラーではありませんし、また安価(1000円)であるぶん装丁が弱い(ページが剥がれやすい)ので、長期間使用するにはややつらいかもしれません。そもそも、編集の仕方や掲載データの取捨選択によって品質は変わりますし、甲書籍に記載されているこのデータが乙書籍には収録されていないといったこともあります。結局のところ、好みと目的に応じて、店頭で見比べて選ぶのが最善でしょう。入手方法については、それぞれ上記リンク先の公式サイトなどで確認して下さい。

 とりあえずは、私自身にとっての覚書として、各作品の収録巻数などを書き出しておきました。いずれ折を見て、それぞれについて内容上のコメント(この記事が有益だとか、このデータが載っているとかいないとか)を書く予定としておきます。上の図表を御覧になってのとおり、私自身、キャラ社関連の攻略本はだいたい購入して持っています。たまに読み返してみると、「次はこんなプレイスタイルでやってみよう」とか「このユニットを育成してみよう」とか、いろいろ思いつくきっかけになったりもします。また、このサイトで攻略記事を公表する際にも、これらの先行業績と内容が重複しないよう常に気を付けていますし、重要と考える記述は明示的に引用することもあります。攻略サイト運営者すべてがこうすべきだとは考えませんが、これらのシリーズのお仕事はもう少し重視(尊重)されてもよいのではないかと思います。

 しかし、『パソコン美少女ゲーム攻略スペシャル』シリーズは84巻をもって休刊したようです。また『攻略王』シリーズについても、店頭で見ても公式サイトを見ても、36巻以降の刊行状況がつかめない状態になっています(――こちらも休止したのでしょうか?)。精度が高く信頼性も高いシリーズであっただけに、たいへん残念なことです。そしてそれとともに、ウェブ上のいわゆる「攻略サイト」の重要性がさらに高まったということでもあります。うちのサイトも、少なくともキャラ社作品については、閲覧者諸氏がよりいっそう作品を楽しむ助けとなりうるよう、今後とも努めていきたいものです。





 《小説版について》

リンク:
・「HARVEST WEB.」:小説版の出版元であるハーヴェスト出版のサイト
・「AQUA PINK」:水碕睦月氏(ライター)のサイト
・「AG-promotion」:三田村半月、甲斐正一、影山二階堂各氏(ライター)の所属元
・「Bumbaclot!!」:たかなみれい氏(ライター)のサイト
・「かんのんのすてき」:観音王子氏(イラストレイター)のサイト
・「RYU-SEKI-DO」:流ひょうご氏(イラストレイター)のサイト
・「CROSS HEART」:悠稀れい氏(イラストレイター)のサイト


 いわゆるノヴェライゼーションとして、ハーヴェスト出版(星雲社)が、『真昼』『ブラウン』『巣作り』『南国』『DC』『王賊』『Wizard's』の7作品の小説版を刊行しています。基礎的な書誌情報は下記一覧でまとめましたが、正確を期して上記ハーヴェスト出版のサイトにて確認なさることをお勧めします。

書名発行日著者ISBN
『真昼に踊る犯罪者』2002年3月1日三田村半月4-434-01720-9
『ブラウン通り三番目』2003年7月1日水碕睦月4-434-03246-1
『巣作りドラゴン』2004年11月1日甲斐正一4-434-05076-1
『南国ドミニオン』2005年9月1日たかなみれい4-434-06319-7
『ダンシング・クレイジーズ』2006年2月1日たかなみれい4-434-07190-4
『王賊』2007年10月15日影山二階堂978-4-434-11100-6
『ウィザーズ・クライマー《ショート・ストーリーズ》』2008年12月1日たかなみれい with ソフトハウスキャラ978-4-434-12465-5

 これらの小説版の構成については、一定のスタイルが守られているようです。
 まず著者については、基本的に原作者(ゲーム版のライター)とは異なる作家が執筆しています。ここで紹介している7作品についての小説版の著者は、それぞれ上記のとおりです(――ただし『ウィザーズ・クライマー』のみは、内藤氏による短編が1本収録されています)。
 冒頭には、キャラクター紹介を兼ねた4ページほどのカラー口絵が掲載されていますが、これらは(カバー表紙と同様に)ゲーム版原作のCGを使用しています(――ただし多少の加工が施されているものもあります)。また本文中には、一冊あたり20枚程度の挿絵が含まれています。こちらも基本的にはゲーム版の原画(またはそれを多少加工したもの)です。ただし『ダンシング・クレイジーズ』の挿絵はKoDE氏が新規に描いておられ、また『ウィザーズ・クライマー』は佐々木氏のほかに観音王子氏、流ひょうご氏、悠稀れい氏の3人が描いておられます。
 本文については「一冊あたり230ページ程度で収める」というフォーマットがあるようです。なお、他の作品では複数巻構成のものもありますが、ここで紹介している7冊はすべて単巻構成です。内容面、つまりストーリーに関しては、基本的にゲーム版の展開に準拠しています。ただし、ゲーム版は基本的にマルチエンディングであるため、小説版ではそのいずれか特定のエンディングに沿った結末になるか、またあるいは多少アレンジされた独自の結末になっています。ちなみに、作中には数回の濡れ場描写が含まれます(――ページ数でみると、全体の2〜3割程度を占めます)。巻末には、小説版著者の「あとがき」があります。
 なお、『王賊』および『ウィザーズ・クライマー』の小説版は、「+Mini Game」(+MG type)と称するもので、それぞれ「おまけミニゲーム『王賊将棋』」「おまけソロゲーム『収穫の塔』」が含まれています。ただし、これらのミニゲームの発案者が誰なのかは明示されていません(――根拠の無い想像ですが、このミニゲームもやはり内藤氏のアイデアなのだろうかと思います)。
 なお、発行時期を見ると、いずれも原作(ゲーム版)の発売日から4ヶ月後乃至6ヶ月後程度の間隔で刊行されています。
 以下、各作品の内容について簡単にご紹介していきます。当然ながら一定範囲のネタバレを含みます点につきご理解下さい(――なお、以下「原作」という場合は、それぞれの同名ゲーム版のことを意味します)。


 『真昼に踊る犯罪者』の小説版は、「深夜(ミッドナイト)−前編−」「第1部 麻薬と戯れる犯罪者たち」「第2部 狐におびえる犯罪者たち」「第3部 過激に騒ぐ犯罪者たち」「深夜−後編−」の5章構成。主要登場人物は、山県一義、ルネリア・エクル狂歌、楽玉、奥平鈴葵宮子アーティ山春日霧姫中橋佳奈美、シマオ・リー、氷野麻紀、葵秋風、シズク霧姫秘書、等々(登場順)。赤字で示した登場人物は、えーと、要するに、本文中に主人公と関係を結びます。そのほか、支援者「用心棒」や量産型ロボ吉なども登場するところは、原作プレイヤーを微笑ませてくれます。
 本文は、原作からのテキスト流用も無く、ほぼ完全な新規書き下ろしです。さすがに個々のランダム依頼を描写するほどページ数に余裕は無かったようですが、主要なルートはきちんと押さえられていますので、原作のおさらいとして十分に役立つでしょう。いやむしろ、原作には欠けていた細部の描写が充実している点、そして王手川グループとの対立構造を基軸として全編をまとめている点で、読み物としては原作よりも優れていると言えます。また細かな点では、たとえばアーティの得物の名前が「白陣刀」だというのは、ゲーム版『DC』に先立って、この『真昼』小説版が初出の筈です(――おそらくキャラ社側から、ゲーム以外の設定資料等も受取ったうえで執筆されたのでしょう)。
 小説版の結末は、「原作のルネリア(の正体が判明する)エンドにさらに一捻り加えた、本書独自の結末」です。『真昼』に愛着のある方には一読をお勧めしたい内容です。


 『ブラウン通り三番目』の小説版は、「序章」から始まって「3月」「4月」「5月」……そして「12月」「1月」「2月」「終章」までの全14章構成。つまり、原作では3年間経過していたところを、小説版では1年間の出来事として再構成しています。主要登場人物は、ジャック、グランディ、セラ、マーチェリッカ、リズィ、ラネット、ヘンドリック。赤文字のキャラクターが2人しかいないことから察してもらえるかと思いますが、この小説版のジャック君は愛妻への操を貫きます。濡れ場シーンも、このシリーズとしては例外的に少なく、本文全体の1割程度にとどまります。
 この作品の本文は、ほぼ原作のテキストどおりの文面が多数見られます(――原作に対してどのようなアプローチをとるかは、作者によってやり方が違うようです)。これは原作に忠実とも言えますが、独自性を出してほしかったとも思います。もっとも、丸々3年分の膨大かつ雑多な出来事を取捨選択して圧縮し、そして一つの物語としてまとめるのは、容易な作業ではなかったことでしょう。この小説版から振り返ってみると、原作の『ブラウン通り』が実に多くのイベントを含んでいたことに気づかされます。扱っている事柄が「小さな冒険者の店の日常の出来事」にとどまっているおかげで、原作『ブラウン通り』には小規模作品の印象がつきまといがちですが、作品の規模そのものはけっして小さくありません。
 ともあれ、小説版の物語は、新妻リズィとともに、1年後の売上競争で1位を獲得すること(これが両親からの条件)を目指してホーネットを経営していくというのが基本線です。そこにグランディが訪れたり、セラ姉さんの「夜中の脅迫」イベントがあったり、ラネットの武術大会があったりします。終盤には、原作には無かった一波瀾(「ラネット誘拐事件」)もあり、物語の結末は、「リズィの両親の真意が判明するエンド、原作でいう「1Aエンド」に近いもの」です。


 小説版『巣作りドラゴン』の章立ては「プロローグ」「生け贄の少女」「剣士 フェイ」「苦悩する王女」「竜狩りの魔導師」「思いの果てに」「エピローグ」。登場人物はブラッド、リュミス、クー、ユメフェイルクルドゥエルナ、マイト、そして親衛隊長ロベルト(ちなみにジョルジュ・ブラストマイアの方は登場しません。「ティエ・テイカー」も明示的には登場しません)。
 小説版の大筋は、各章タイトルから想像されるとおりですが、内容はかなり手が込んでいます。原作はブラッドの一人称視点でしたが、小説版は三人称形式で叙述されており、地の文での描写がはるかに充実しています(――たとえば「竜殺し」の力が顕在化するくだり)。またイベントの組み立てもしっかりしており、各キャラクターの人物造形も掘り下げられています。たとえばルクルは、原作では小国に生まれた世慣れない姫でありながら力を尽くす姿が印象的でしたが、小説版では強い精神力を備えた懐の深い人間像として描かれています。リュミスベルンに関しても、原作では大半がおまけシナリオで語られるだけでしたが、この小説版では各章の末尾に「リュミス エピソード」が挿入されるかたちで、物語の中にきちんと組み込まれています。また、原作ではユーモラスで楽天的な雰囲気が終始支配的でしたが、小説版では「バカ分」は希薄で、深刻な影の差す物語になっています。全体的にみて、たいへん質の高いノヴェライゼーションだと言えます。
 物語の結末は、「ユメvsリュミスの対決イベントおよびルクルのクーデターイベントを含みつつ、最終的にはリュミスエンド」になっています。ちなみに、連隊長は「連隊長」(通常は大佐が任命される)ではなく「分隊長」(通常は大尉)に変更されています。連隊長エンドを扱わない場合には、このくらいが適正だと判断されたのでしょうか。


 『南国ドミニオン』小説版の章立ては「プロローグ」「漂着」「衝突」「怪異」「駆除」「別離」「帰還」「楽園」「エピローグ」。登場人物は、アロハ、ドクター、メガネ、ブック、パパ、ママポニーお嬢メイドの十人と、「例の島の怪物」。この小説版も(原作はアロハの一人称でしたが)三人称での叙述です。
 さて、内容について。あの自由さを極めたゲームシステムをいったいどうやって小説形態に落とし込むのかが気になるところですが、この小説版は、原作の自由さにふさわしく破天荒な展開に満ちています。あとがきによると「自分でプレイした足跡をもとにプロットを立てました」(二三七頁)とのことで、その意味では、たかなみ氏による『南国』リプレイ小説のような趣を持っています。そして、そう考えれば、この自由奔放な小説版は、原作の自由さに対してむしろ忠実なのだと言えるかもしれません。たとえば登場人物について、原作とは異なる設定が与えられているところもありますが、「それもまた一興」と思えるのは、やはりこの『南国』世界なればこそでしょう。原作をプレイした方が他のプレイスタイルを追体験するためにも、または原作をプレイしていない方が『南国』の雰囲気を味わうためにも、十分におすすめできる楽しい小説です。原作で恒例の温泉イベントがあるのも微笑ましい点です。
 このような自由な作品について結末を記すことに意味はありませんが、念のため書いておきますと、「記憶を取り戻し、お嬢と二人で永住する(他の八人は脱出)」ことになります。


 小説版『ダンシング・クレイジーズ』は、「プロローグ」「死神の嘲笑」「女王蜂の屈服」「爆弾と刃」「出題者の魔手」「放たれた狂犬」「蜘蛛の陰謀」「フラッシュ!」「エピローグ」という構成。登場人物は伊奈瀬晶、秋村美雪、伊奈瀬姫子、葉木崎零、松島将也/多田真一郎、リンテール葉木崎唯、「教授」、「爆弾」、「刃」「蜘蛛」「死の行進」/「牙」/「暴走列車」、「葵宮子」です。「出題者」トリオは、伊奈瀬晶とは交わりませんが、彼女等三人でいろいろなことをするシーンがあります。なお、『真昼』組や『うえはぁす』組は基本的に登場しません。
 ストーリーは、基本的に原作(四周目)どおりの展開です。『DC』の場合は、「市街徘徊」時イベントや「会社」イベントなどのサブイベントを除外すれば、本筋そのものは比較的シンプルですので、小説化に際してのプロット構成は比較的容易でしょう。また、テキストに関しては、アクション描写や武器描写が充実しているのは小説版の大きな長所です。そうした具体的描写は、原作ではSLGパートによって表現されている――言い換えれば文面上は端折られてしまっている――ところですから(ちなみに、この小説版では例えば「狂犬」がマテバM2006使いだったり「闘犬」の銃がSIG SAUER P220だったりします)。また、本作の挿絵は原作原画の再利用ではなく、KoDE氏による新規イラストになっています。原作とは異なったシチュエーションが扱われているのは、そのおかげでしょう。このほか、原作では言及されていなかった出来事として、「姫子がカエデの生まれ変わりであることをサクラが知る」くだりなどもあります(――もっとも、同種のネタは同人誌「珠手箱」の漫画にもありましたが)。さらに、温泉イベントもあります。登場人物に関しては、とりわけミリアの性格設定とリンテールの基本設定に関して、多少の変更が加えられています。前者のミリアの性格変更は、ルネリアが登場しないことを受けて人間関係を調整したものと思われます。また後者のリンテールの設定変更は、物語の結着のためにうまく機能しています(――しかし振り返ってみると、最後まで付き添ってくれるゲーム版のリンテールは、ほんとうに心優しいキャラクターだったのだな、と感慨深くもあります)。
 この小説版の結末は「原作でいう「美雪/唯/サクラEND」(No.53)」です。


 『王賊』小説版の章立ては、「プロローグ」「エルネアの章」「ネイの章」「ムストの章」「八重の章」「リディアの章」「アルイエットの章」「エピローグ」。この小説版は、八重が書き残した文献(!)などを元にして後世の史家がジン=アーバレストの事跡を綴るという、つまり史書または戦記ものの体裁を採っています。もちろん本文中にはあーんなことやこーんなことも書かれているので、この体裁を額面通りに受け取ると、要するに「八重がジンに対して醜聞暴露の時限爆弾を仕掛けていた」ということになってしまったりします。怖ろしい話です。いや、ともあれ。登場人物はジン、八重アルイエットムストエルネアリンデルロットルカ一葉ネイルティモネケーニスクフェアリディア、カーディル。……真っ赤ですね。そして、男性陣の名前がありませんね。キューベル公爵は序盤に名前が記されるだけ、そしてトールも火山もセルバイアンもロンゼン閣下も、小説版には登場していません。かなしい話です。
 もっとも、男性キャラクターが登場しないのには、事情があるかと思われます。というのは、反乱鎮圧からヴィスト王国崩壊までを描ききるのに、230ページは少なすぎたように見えるからです。本作は他作品と比べて文字ポイントが明らかに小さく、本筋以外のミッションはほとんど無視しており、軍事面にはろくに紙幅を与えず(ただ戦勝結果のみを簡単に記す程度)、そしてそれ以外の記述もきわめて浅い描写で通り過ぎているのに、230ページぎりぎりです。この状況では、余計なキャラクターを登場させる余裕が無かったのであろうと思われます(――その割に、濡れ場シーンのページ数は多いのですけど)。残念な話です。
 ともあれ。本作では、各ページの下部に、本文の内容に即した原作CGや顔アイコンが掲載されています。PCゲームでの立ち絵表現に類似した視覚効果を挙げるもので、ちょっと面白いと思います。また内容に関しては、「ムスト・ライナローム」「ルティモネ・ラックノイル」というフルネームが書かれています。小説版にはメーカーチェックが入っているようなので、公式設定と見做してよいと思われますが、なかなか良いネーミングです。結末は、「いったん旅立つが、再びエルト王国に戻(され)るハーレムエンド」です。
 なお、本書の巻末には「おまけミニゲーム『王賊将棋』」が収録されています。ここでは詳しく説明しませんが、要するにサイコロを用いて駒同士の衝突結果を判定する、軍人将棋のようなものです。小説版を購入した方は遊んでみて下さい。


 小説版『ウィザーズ・クライマー』も発売されました。正確なタイトルは『ウィザーズ・クライマー《ショート・ストーリーズ》』です――つまり、原作の展開を忠実に再現したものではなく、むしろ原作に対する二次創作短編集のような趣の構成になっています。目次は、「若い男の主張」「誘惑のソシエット」「宝探し」「悪人退治」「ストッキング事件」「リノの秘密」「肝試し」「塔での試練」「特命」「師匠のバイト」「変体触手万決戦編」、そして特別読みきりの「協会の犬」。……なんだかとても不可思議なタイトルが目に入りますが、気になる方は購入して読んでみましょう。主な登場人物は、セリスソシエット、ラズロック、ヴィオラ、イエル、ルーンリノとその妻、モニカとリオニス(海岸監視員)、協会特別生徒ズパチェ(小説版オリジナルキャラクター)、などなどです。
 著者のたかなみ氏は、『南国』『DC』の時と同様、原作をよく読み込んでその面白さをきちんと引き継ぐように小説化を行っておられます。原作ののびのびしたムードは十分に再現されていますし、原作の小ネタ群もよく取り込まれています。構成については、すでに述べたとおり、原作の根幹にあった「魔法大会挑戦」の部分を潔く放棄して、彼等の生活にまつわる多種多様な掌編をオムニバス的に集めたものになっています。その理由は、原作の極端な引継ぎ周回システムを小説で再現するのは困難であったためではないかと想像されます(――つまり、3年間×n周ではなく本当にたった3年間で、超一流魔法使いヴィオラに勝利させるという展開には、無理があったでしょうから)。事情の如何はともあれ、一読しての感想としては、この開放的な構成はいかにもソフトハウスキャラらしいように思われました。こんなかたちのゲームノヴェライゼーションを読んだのは初めてですが、ショートシナリオとアダルトシーンを集中的に取り上げているという点でも、また作品世界をシェアドワールド的に拡張しているという点でも、これこそがまさにソフトハウスキャラファンたちが望むような小説版だと言ってもよいかもしれません。
 なお、「ソフトハウスキャラスタッフによる特別読みきり」と付言された短編「協会の犬」のみは、たかなみ氏ではなく内藤氏によって書かれたものです。さらに新規挿絵も佐々木氏自身によるものです。オリジナルスタッフによる新規ストーリーという点でも重要ですし、ひねりの利いた短編という意味でも読み甲斐がありますが、さらに、内藤騎之介氏の「小説」としておそらく初めて商業公開された作品だという点でも貴重です。実のところ、文体も内容もゲームテキストの時とほとんど変わらないのですが、縦書きの書籍形態で内藤氏のテキストを読めるというのはなかなか感慨深いものですし、内藤テキストの明晰さをあらためて実感できました。ちなみにこの短編の主人公は、題名から推察されるとおり、エンディングが無かった女ソシエットです。
 なお、本編のページ下部のスペースを利用して、「おまけソロゲーム『収穫の塔』」が設けられています。プレイするにはトランプカード一揃いが必要です。


 最後に少しだけ感想を書いておきます。小説版を読んであらためて実感したのは、原作(PCゲーム版)のテキスト量の多さでした。最近の国内PCゲームは、フルプライスAVGの場合だと1作あたり文庫本10冊ほどのテキスト量が含まれていると聞きます。キャラ社のSLG作品は、大型AVGよりは少ないテキスト分量かもしれませんが、それでも原作(PCゲーム版)と小説版1冊とを読み比べてみると、一本のゲームにいかに多くのテキストが含まれていたかに気づかされます。これほどの分量を、わずか数ヶ月で、しかも完全オリジナルの内容で、さらに一定以上の品質を維持して書ききるだけの才能と労力は、少なくとも私の想像力を超えています。
 また、少々余計な話ですが、PCゲームの特質も再認識させられます。たとえば「分量の物理的制約(たとえばページ数のような)がほぼ無いこと」、「単線的な構成をとる必要が無いこと」、「マルチエンディングであること」、「テキスト、画像、音響、システムを利用した複合的メディアであること」等々。小説を刊行するのと引き比べて、自由のあるメディアなのだと思います(もちろん、その裏面の難しさがあるにしても)。
 ともあれ、内容は基本的に原作に沿ったものですし、品質もおおむね満足できる水準です。一般に「小説版」に期待されるようなことはおおむね満たしていると思われます。すなわち、「ストーリーを紙媒体で安価に読み返せること」、「PCゲーム版を入手していない人にとっては、その内容を知るための一つの(代替的)手段となること」、「小説版著者の解釈をつうじて、原作に新たなイメージが付け加えられること」、「場合によっては原作の内容を踏まえたさらなる展開(後日談や外伝)が語られること」。もちろん、原作との関係を抜きにしても、おおむね読むに堪える出来です。ただし、原作の形態からして、小説化しにくかったであろう作品もありますが。


 (2009年1月9日版)



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