作中世界の相互連関について


 《はじめに》
 このページでは、ソフトハウスキャラ各作品の登場人物、世界設定、各種小ネタなどのつながりについて、編者が気付いたものをまとめています。各作品のネタバレを含んでいますので、ページ閲覧に際してはご注意下さい。
 ここでは、基本的に各作品そのもの(本編シナリオ、SLGパートのデータ群、CGやムービー、おまけコーナーの情報、マニュアル等)と、オフィシャルサイトで公開された製品情報に依拠しています。公式情報に由来すると思われるかぎり、それ以外の情報を参考にしたところもあります(――例えば流通系サイトでの作品紹介ページや、攻略本の記述など)。作品外でのスタッフの発言(「劇レボ」での記述など)も適宜参照していますが、位置づけとしては二次的情報にとどまります。また、同人誌形態の「原画集」はここでは参照していません。「珠手箱」同人誌はまぎれもなくオリジナルスタッフの手によるものですが、メーカーとしての公式見解を示すものではなく、また正規かつ一般の市販流通品ではないからです。
 この連関記事は単一ページで構成していますので、特定の単語(人名など)について探したいという場合には「ctrl+F」などでページ内検索されることをおすすめします。また、登場人物及び出演声優の基本情報については、別掲「ソフトハウスキャラのキャラクター小辞典」(※CSV用のテキストデータ)を参照して下さい。なお、主要な実質的関連をあらかじめ図示すると、この図(PNG画像)のようになります。


 《目次》
・はしがき(↑)
序論(↓)
1.個別作品から見た関連要素(↓)
 ・第1作:『葵屋まっしぐら』(↓)
 ・第2作:『うえはぁす』(↓)
 ・第3作:『海賊王冠』(↓)
 ・第4作:『真昼に踊る犯罪者』(↓)
 ・第5作:『アルフレッド学園魔物大隊』(↓)
 ・第6作:『ブラウン通り三番目』(↓)
 ・第7作:『LEVEL JUSTICE』(↓)
 ・第8作:『巣作りドラゴン』(↓)
 ・第9作:『南国ドミニオン』(↓)
 ・第10作:『Dancing Crazies』(↓)
 ・第11作:『グリンスヴァールの森の中』(↓)
 ・第12作:『王賊』(↓)
 ・第13作:『Wizard's Climber』(↓)
 ・第14作:『DAISOUNAN』(↓)

 ・第15作:『忍流』(↓)
 ・第16作:『BUNNYBLACK』(↓)
 ・第17作:『雪鬼屋温泉記』(↓)
2.全体にわたる関連性の展望(↓)
 (1):温泉旅館「葵屋」(↓)
 (2):通貨、言語、魔法(↓)
 (3):竜族と龍族(↓)
3.ソフトハウスキャラ世界の全体構造(↓)
 (1):現代世界を舞台とする作品のグループ(↓)
 (2):西洋中世ファンタジー的作品のグループ(↓)
 (3):近世的世界:『海賊王冠』と『忍流』(↓)
 (4):作品グループ間の関係(↓)
 (5):天界と魔界(↓)
 (6):ソフトハウスキャラの公式見解(↓)
 (7):全体構造についての一仮説(↓)
結語:関連性に対する評価(↓)




 ――序論――
 ソフトハウスキャラ(キャラ社)の作品には、テキストやグラフィックの随所に旧作キャラクターへの言及や旧作の世界設定との共通性がしばしば見出される。そしてそれらは全体として一つの大きな世界像を念頭に置いているように見受けられる。これに関しては、実際に同社オフィシャルサイトにおいて「当社作品は全て同じ世界軸で動いています」(註と明言されたことがある。旧作をプレイした者は、新作で扱われた小ネタの中から様々なクロスオーバーを発見し、時には旧作との関連をファンディスク的に楽しみ、また時には複数作品を貫流する大きな状況の流れを看て取ることができるだろう。
 ただし、それらの連関は基本的に個別作品の根幹部分に関わるほど決定的なものではなく、旧作を知らないプレイヤーも新作をそれ単体で楽しむことができるようになっている。つまり、旧作の知識が要求されることはなく、またスタッフの設定遊戯に付き合うことをけっして強要されない。作中に見出される連関のほとんどは、偶然気付いたプレイヤーの微笑を誘う程度のものであり、それゆえ《遊び》として受け取られるのが相応しい。しかし、そうした小ネタの由来や作品間のつながりが気になるプレイヤーもいるであろうから、そうした関連性について、ここで気付いた範囲でまとめておく。
註) 上記の発言は、2002年6月3日から公式サイトで行われた思いつき企画「投票型アンケート」の結果に対する、葵(仮)ちゃんのコメントである。現在の公式サイトでは閲覧できないが、Internet Archiveで擬似的に閲覧できる[http://web.archive.org/web/20020809065849/www.shchara.com/07event/anq.htm])。



1.個別作品から見た関連要素

 ――『葵屋まっしぐら』について――
 第一作『葵屋まっしぐら』の舞台は奥山村(おそらく戦後日本のどこかの山村)であり、村内の温泉旅館「葵屋」の経営再建が本作の主眼となっている。後の第2章で述べる()ように、これと同名の「葵屋」温泉旅館がこれ以降すべての作品に登場し、しかも本作(特に葵一族)に縁あるキャラクターたちが何度も登場する。実際、本作のBGMの一つ「お宮のテーマ」は、その後『アルフレッド』まで4作の間、アレンジを加えつつ各作品の葵屋BGMとして継承されていた。いわば音楽を通じてお宮さんに見守られているという意味で、控えめながらもなかなか気の利いた演出と言えるだろう。
 ヒロインの一人であるお宮は、『真昼』では回想のかたちで間接的に再登場し、『忍流』でも言及されている。また、その後の作品群では、主人公との間に四人(四匹)の娘を産んだことになっているようである。すなわち、長女の「春炎」(『アルフレッド』の葵屋に登場)、次女の「秋風」(『真昼』の葵屋に登場)、三女の「宮子」(『真昼』のヒロイン、『LJ』『DC』にも登場)、四女の「小宮」(『うえはぁす』の葵屋に登場し、『真昼』にもユニットとして登場した)。このことから、これらの作品群は、『葵屋』につらなる同一世界上の物語だと思われる。ただし、お宮の娘たちが生まれて成長する間の年月(猫又の成長速度は不明だが、とにかく彼女らが成体になるまでの期間)が考慮されねばならないので、その分だけ『葵屋』は時間的に先行すると見做されるだろう。
 これ以外では、料理長の「源さん」こと中村源三郎氏の話が、のちの作品で何度か扱われている。『真昼』依頼書881番で食通家を唸らせた料理「モチ煮込み」を考案した人物も、『アルフレッド』葵屋イベント(回想115番)における本店料理長も、おそらくあの忠良な奇才料理人のことである。
小ネタの連関。『葵屋』おまけシナリオに登場する「くま」は、その後の「クマン」の原型である(――『LJ』のユニット、『巣作り』のユニット、『南国』のアイテム「下手の絵画」)。さらに『Wizard's』『BB』のクマンは、それまでの簡素な外見を捨て、一転してリアルな形状で登場している。なお、『アルフレッド』の「熊と弓」イベントにも熊ネタがあり、『忍流』にも「熊」ユニットがある。
 「小僧」シリーズも、『葵屋』以来の恒例ネタである。『葵屋』におけるTVドラマ『愛の無い愛憎は小僧』に始まり、『愛のある小僧は愛情』(『真昼』)、『愛の無い愛憎は小僧』(『アルフレッド』。ドラマを原作とするアニメ化版)、『愛のある小僧は愛情』(『LJ』。パート14。パート13のビデオも)、『愛情の無い愛憎は小僧』(『南国』、姫が過去にモブ出演した)、『愛情の無い小僧は愛憎』(『DC』、パート34)と続き、現代世界ものの日常シーンを彩る小ネタとして皆勤している。『王賊』以降では、現代世界系列以外の作品でも「小僧」シリーズは度々登場している。


 ――『うえはぁす』について――
 第二作『うえはぁす』の舞台は、エビを特産とするゴースティアル王国(現代欧州の小国)であるが、設定面では特に『真昼』との関連が強い。主人公エリオットは、『真昼』の主人公「山県一義(/ライワード・エクル)」とパートナーを組んでいたとされているし、本作に登場する組織「アイズバーグ(/アイスバーグ)」も『真昼』で言及された(『真昼』依頼書933番、同946番ほか)。そのうえクリスやロボ吉が支援メンバーとして『真昼』に登場しさえする。さらに後の作品『DC』では、クリス及びエリオットが後半のサブキャラクターとして再登場し、上記のライワードとの関係についてもいっそう具体的に語られる。
 他方で前作『葵屋』との連関としては、隠れ葵屋に小宮(女将)、月池小姫(仲居)、月池大姫(臨時仲居、小姫の母親)が登場するほか、茨城教授とおぼしき発掘団や「紅」と思われる忍者などが話題に挙がる。また、TVレポーターの大文字君子(/紀美子)も再登場している。
 このほか、王国内の地名として「シリング」「ブレッド」がある。それぞれ「蒸留酒/シリング」(『ブラウン』の商品)と「B(共通通貨ブレッド)」を連想させるが、実際に関連があるのかどうかは不明である。また、ファンタジー系世界の高名な魔法使い「ベイモン・クラリティーズ」の名が、ゴースティアル王族のミドルネームである「クラリティーズ」と符合するが、こちらも具体的関係は不明。時代の離れた血縁であるというのはなかなかロマンティックであるが、現時点では読者の自由な想像の範疇を超えるものではない。


 ――『海賊王冠』について――
 第三作『海賊王冠』は、ダルモア王国とルシアン連合とに挟まれたホワイトオーク島周辺の海域一帯が舞台となっている。地理風土や政治情勢は、明らかに黒海近辺を連想させる。時代背景等は本編中で詳細に語られているわけではないが、技術水準はようやく大砲や銃器が開発されている程度(近代初頭並か)であり、またダルモア国の文物は和風の意匠となっている。
 本作は他作品との接点がきわめて希薄であるが、葵屋(葵屋島)イベントがわずかに関連を示唆している。葵屋に登場する小流は、『葵屋』『忍流』と読み合わせると、月池小姫の血縁者の龍族であると考えられる。しかし、本作の世界軸上の位置づけは不明瞭なままであるが、にもかかわらず、現代世界系列と中世ファンタジー世界系列を結びつける重要な位置にある。すなわち、『葵屋』とのつながりを持ちつつ、魔法の存在と通貨ブレッドを伴っているという点で。
小ネタの連関。作中アイテム「愛のフォーク」について「某国王家で使用されるフォーク。/その王家の人間は、このフォークで色々な事ができるらしい。」との説明があり、前作におけるゴースティアル王家のフォーク武術を連想させるが、あくまで隠微な示唆にとどまっている。また、のちに『ブラウン』の冒険者チームとして「海賊団」が登場し、そのコメントとして「大海賊マドラメアリが率いる海賊団。新人海賊アイスを無理矢理引き連れ」云々と述べられているが、これは『海賊』本編の描写と矛盾する。それゆえ、『ブラウン』の特殊冒険者チームの件は、世界設定とは無関係な、単なるファンサービスと解するのが適当と思う。また『DC』には「サイザー」という名の賞金首が登場するが、これもただ単に「最強の敵」の地位と名前をシンボリックに継承しているだけであり、実質的関連を考える余地は(今のところ)無い。


 ――『真昼に踊る犯罪者』について――
 現代日本(架空都市「加来山府」)を舞台とする『真昼に踊る犯罪者』は、現代世界系作品群の中でも重要な位置を占めている。旧作との関係では、『葵屋』『うえはぁす』の主要キャラクターたち(葵一族、月池家、茨木教授、クリス、ロボ吉)が再登場し、また葵家の周辺事情についてもテキストで比較的詳細に敷衍されている(主に秋風の台詞。お宮が少なくとも四百歳以上であること、奥山村と加来山府は「半日ぐらい掛かる」ほどの距離だという話など)。さらに山県一義(ライワード)がエリオットと組んでヨーロッパで「何でも屋」を営んでいた件が、本編中で明示的に言及される(『うえはぁす』と共通の過去。この縁はさらに『DC』にも受け継がれる)。他方で、これ以降の作品群との関係について見ると、『真昼』のメンバーは、『アルフレッド』(金庫イベント、授業及び体育のCG、作中作)、『LJ』(葵屋イベント、奴隷オークション事件、暴動CGのモブ)、『DC』(詳細は後述)にも再登場している。とりわけ『DC』は、ほとんど『真昼』の続編と言って差支えないほどである。
小ネタの連関。細かい点では、小姫(『葵屋』)の武器とアーティ(『真昼』)の白陣刀がともに「神珍鉄」であったり、宮子がTVのクイズで冷蔵庫を当てるイベントが『葵屋』(お宮がTVの懸賞で冷蔵庫を当てた)の本歌取りであったり、また『真昼』のシズクの帽子と『アルフレッド』着替え風景の鞄とに同じ「MOON RABBIT」ロゴがあったりもするが、特に連関と呼ぶほどのものではない。
 なお、支援メンバーの中に龍田(野武士)、皇(不良)、天のジョリ(忍者)、浜田(銀行員)、サスケ(飼い猫)、タマル(飼い猫)、内藤(隠居)、佐々木(一般人)、と主要スタッフ(もしくはそれに準じる)の名前のユニットが揃っているのは偶然ではなかろう。のちに『LJ』でも、原画家佐々木氏を模したと思われる「タマール」という怪人ユニットが登場する。


 ――『アルフレッド学園魔物大隊』について――
 第五作『アルフレッド学園魔物大隊』の主要舞台であるアルフレッド学園は、関西圏の一隅にある(現代日本)と語られている――残念ながら関西弁は微塵も聞かれないが。この学園の制服は、のちに『LJ』の唐紅葉月(ロータス学園生)が着ているものと同一のデザインである。アルフレッド学園とロータス学園が姉妹校であるとは明言されていないが、しかしのちに『グリンス』でアルフレッド学園の「学園の精霊」とロータス学園の「学園の精霊」が姉妹であるとされ、この関連性が補強された(――ちなみに、「時計塔の女王」ことアルフレッド学園の精霊の名が「リアン」であることも、『グリンス』によって判明した)。
 現代世界を舞台とする作品群との関係では、『真昼』ヒロインたちが登場する(――専用のイベントがあり、また無関係なCGにもモブのように描き込まれている)。なお、『真昼』本編中で春炎は本店に戻っていると語られていたが、『アルフレッド』に登場する春炎の葵屋は支店であるらしく、双方の作中時期は一致しないようである。
 他方でこの『アルフレッド』世界の基礎を為している《天界−魔界−人間界》の重層構造は、『巣作り』『グリンス』『Wizard's』『BB』のファンタジー系作品群と共通の世界設定である。個別的に見ても、雪継が魔界に捨ててきた魔力塊――通称「ウニ」――とおぼしき触手生物が、『グリンス』『王賊』にも登場するし、魔王アイシエス(夏野雪継の父)の名は、『ブラウン』『BB』でも再度言及される。さらに、ギュンギュスカーの名(吸血鬼シルビア・ギュンギュスカー、およびその父であるギュンギュスカー魔界公爵)が、周知の通り「ギュンギュスカー商会」として『巣作り』『王賊』『BB』にも現れる。
 さらに、未来世界を舞台とする『DAISOUNAN』では、アルフレッド学園の教師「エルリッヒ・フォン・フローミスト(F・F エルリヒ)」の名前に言及されており、それゆえ『DAISOUNAN』世界との間にもつながりがあると見做される(――なお、このキャラクターについてはオフィシャルサイトの劇レボ第13回を参照)。
 全体的にみて、作品間の設定連関についてはこの『アルフレッド学園』が一つの重要な結節点となっているように思われる。
小ネタの連関。雪継の自室には『葵屋』『うえはぁす』『真昼』それぞれのパッケージイラストがポスターとして貼ってある(――雪継自室の背景グラフィック及びサフィールのイベントCGに注目)。恒例の「小僧」ドラマの話題もある。


 ――『ブラウン通り三番目』について――
 第六作『ブラウン通り三番目』の舞台は、森に囲まれた西方の城塞都市カナードである。世界像は基本的に西洋中世風ファンタジーの流儀を踏襲しているが、郵便制度や商店の経営形態、魔法道具の普及状況、商工会や盗賊組合の存在、都市と森の関係、冒険者の社会的地位、婚姻制度など、各所の記述に独自の掘り下げが窺われる。
 この作品は、特に『巣作り』との連関が緊密であり、元「銀」のキャラクターたちが『巣作り』に(再)登場する。このことから、『ブラウン』『巣作り』はほぼ同時期の状況であると考えられる。また、葵屋イベントに登場する焔夜も、『巣作り』で再登場した。
小ネタの連関。ウィットニーは、この作品が初登場である。「謎解きの好きな行商のパン屋」というキャラクター像はそのままに、『巣作り』に再登場し、さらに『グリンス』以降の全作品になんらかのかたちで登場している。
 「アスパラガスの個性的な食べ方」も、幕間会話の恒例ネタとなっている。『ブラウン』でマーチェリッカとの喫茶店イベントで初めて取り上げられて以来、『巣作り』ではユメとメイドの雑談会話に、『DC』でも賞金首132番のテキストに、『グリンス』にも複数回、『王賊』では地域活動イベント、『Wizard's』ではイエルイベントと料理大会イベント、『忍流』では近習との会話、『BB』ではジョンの幕間会話に、ほぼ皆勤している。
 すでに述べたように、本作には旧作の主要キャラクターとおぼしき面々が特殊冒険者チームとして登場する(「アルフレッド」「クレイジーズ」「海賊団」「アヤカシ」。この時点ですでに『真昼』チームがcraziesを名乗っているのは興味深い)。ただし、冒険者説明及び世界設定から見て、額面どおりに受け取るのは無理があり、単なる遊びもしくはサービスと考えるのが妥当かと思われる。また、冒険者チーム「サファイア」について「アイドル冒険者クーの居るパーティ。実力は無いが、人気だけはある。得意技は誤魔化しコンサート。歌詞を間違えるのはワザとです。」とあるが……魔界の歌姫の副業かと想像するのはさすがに邪推だろう。
 その他。商品画像の一部(春画本各種)が旧作のCGを多数利用している(――詳細は別掲の商品データを参照のこと)。

 冒険者チーム「銀」のメンバーはリーダーのガーランド、ジャック・ゴールドアイ、セラ・エンジェルスカイ、グランディ・アイアン、ロバート、レイラ・スパルコアの6人である。金眼のジャック(戦士)、鋼のグランディ(戦士)は『ブラウン』に登場している。炎のセラ(魔法使い)も、『ブラウン』に登場したのち、『巣作り』『グリンス』でも高名な魔法使いとして名前を挙げられている。雷音のレイラ(盗賊)は、『ブラウン』本編中(ジャックが冒険者時代に稼いだお金の話)で話題に挙がっており、その後『巣作り』では実際に登場した。「銀」勢揃いCGのシルエットを見るにポニーテールのようである(『ブラウン』同梱のラフ画集には顔まで描き込まれている)。リーダーである英雄騎士ガーランド(騎士)については『ブラウン』本編中で、「銀」解散後に某国の姫と結婚したと語られているほか、商品「伝説の冒険者の秘密」でその一面を窺い知ることができる。神腕のロバート(戦士?)――剣を携えた横向きのシルエットがおそらく彼であろう――のみは、いまだ何も語られていない。


 ――『LEVEL JUSTICE』について――
 現代日本(オフィシャルサイトによれば2003年)の架空都市「奈賀島府」を舞台とする第七作『LEVEL JUSTICE(レベル・ジャスティス)』(『LJ』)は、『真昼』との連関が特に強い。たとえば葵屋で宮子たちが寛いでいたり、また鈴が暴動発生CGのモブとして登場していたりする。奴隷オークション事件の後日談のテキストで言及されているのも、「何でも屋」に他ならない。『真昼』の舞台であった加来山府についても作中で頻繁に言及されており、明らかに同一の世界で構想されていることが見て取れる。マップ施設にも、「山春日」「王手川」――ともに『真昼』に出ていた名前――といった固有名詞も散見される。
 そのほか、神代美香が実家の事情を唐紅葉月に愚痴る一幕の「神園」家は、おそらく『アルフレッド』の巫女研部長の神園美加子の家のことであろう。また、墓山市のマップ施設に「月池神社」があるのは、『葵屋』の月池一族との関連を示唆するものと思われる。
小ネタの連関。怪人「エロ本ガール」シリーズのグラフィックに、『アルフレッド』や『ブラウン』のCGが利用されているのが看て取れる。また、涼屋綾菜がバラに名付けた「アイスバーグちゃん」は、『うえはぁす』を念頭に置いたものであろう(――花にマフィア組織をネーミングするとは、さすが涼屋綾菜である)。
 なお、オープニングムービーの背景に「有限会社伽羅」や「阿倍野生命」(あべのせいめい……)といった看板が見えるが、だからといって奈賀島府が関西圏にあるとまでは言えまい。また、作品世界の実質的連関に関わるものとは言えないが。


 ――『巣作りドラゴン』について――
 再び中世ヨーロッパ風ファンタジーに取材する第八作『巣作りドラゴン』は、エルブワード王国領内の山中にあるブラッドの「巣」が主な舞台である(――おまけシナリオでは「中世の西洋が舞台」だと明言されている)。前々作『ブラウン』との関連部分も多いが、その後の『グリンス』『王賊』『Wizard's』『BB』へと続くファンタジー系統の世界像をはっきりと定位したという点で、とりわけ重要な里程標的作品である。
 まず『ブラウン』との関係について。作中では「銀」の一人であったレイラが実際に登場し、また著名な魔法使いの一人としてセラの名前が挙げられるなど、明らかに『ブラウン』と同一世界の同時代である。両者の地理的関係は明らかでないが、時間的関係については具体性のある記述がある。双方の葵屋に「焔夜」というキャラクターが登場し、彼女は「数年前に人間に封印された」云々と『巣作り』でクーが語っている。これはおそらく『ブラウン』本編の七年前に「銀」に封印された事実を指している。『ブラウン』の記述に即して見ると《「銀」結成−(四年程度)−焔夜封印事件−(四年程度)−「銀」解散−(三年)−『ブラウン』本編開始》という継起関係になっている。クーの言う「数年」が具体的に何年であるかは分からないが、焔夜封印事件を手掛かりにして見るかぎりでは、おおむね同時期(前後二、三年程度)であろうと考えられる。
 天才魔法使いメイア・クルセイダの噂は、本作が初出である。彼女の名前は『グリンス』『王賊』『Wizard's』でもさまざまに噂されるが、本作では、ルクル王女とロベルト・カーロンとの会話の中で名前を挙げられている。
 ギュンギュスカー商会も、正式には本作が初出である。ただし、シルビア・ギュンギュスカーの名前を通じて、すでに『アルフレッド』で間接的に言及されていたが。その後、『王賊』『BB』でも、ギュンギュスカー商会の活動ぶりを瞥見することができる。
 さらに、ソフトハウスキャラ世界のモンスターの多くが、この『巣作り』で確立された。「ベト」「モエルモン」「デーモンスピア」「イモモ」「暗黒騎士」「ハンマースイング」等々、本作の配下ユニットの多くが、のちの作品でも再登場している(『王賊』『Wizard's』『BB』)。
 ところで、本作の「連隊長」ことクーは、おそらくギュンギュスカー公の娘であり、『アルフレッド』のシルビア・ギュンギュスカーの妹である。「クーちゃんの魔界こぼれ話」で語られているクーの姉が誰であるかは確定しきれない(シルビア、セイ、ステックのいずれとしても話の筋は通る)が、ともに赤髪である点に鑑みても、「休憩」時のしりとり遊びで殊更に「血液」を挙げているところを見ても、クーもギュンギュスカー家の令嬢であると――すなわち吸血魔族でありシルビアの妹であると――考えるのが素直な理解かと思われる。ただし、シルビアには『アルフレッド』時点で約230歳という年齢設定があり、これが設定の整合性の見地からは問題になりうる。『巣作り』から『アルフレッド』までの時間経過が230年未満であると想定するか、でなければ双方は互いに異なる世界と考えるか、魔界での年齢計算と人間界の時間経過とは異なると考えるか、なんらかの解決策が必要になる。
小ネタの連関。ブラッドの私室には『ブラウン』のカナードの全景画が飾られているが、実質的連関の証拠とするには弱い。また、「銀」という侵入者ユニットが存在するが、これも『ブラウン』の「銀」とは別物であろう。さらに、特殊な配下モンスターとして前作『LJ』の怪人たちが登場するが、これも純粋なファンサービスと見るべきだろう。おまけムービーの対戦カードゲームにキリッサたちが登場しているのと同じような、他愛の無い遊びと思われる。その他、おまけ「クイズ」の解答候補には、「ゴールドアイ商会」(ジャックの実家)や「ユメ・サクラザキ」(『DC』の賞金首006番「殺人手品師」ことジャンポール・サクラザキ?)といった単語も出てくる。
 なお、「サイオンジ」の件や「古代書にあったセリフ」「ホットドック」などの記述から、『ブラウン』『巣作り』世界のロケーションが実は遠い未来の地球であると想像する余地はあるが、正面切って支持し得るほどの根拠は無い。基本的に、作中作イベントの内容は世界設定上の観点で取り上げる必要は無いと思われる。


 ――『南国ドミニオン』について――
 綾風柳晶氏を原画担当に擁した第九作『南国ドミニオン』は、いずことも知れぬ絶海の無人島をその舞台としている(時代は現代)。舞台設定ゆえに直接的なクロスオーバーは難しいが、細部には意外なほど多くの旧作ネタが盛り込まれている。温泉(跡)で湯浴みするイベントでは、岩に刻まれた「葵屋」の文字が判読されると触れられている。この限りで、本作に葵屋は登場したとも言えるし、登場しなかったとも言い得る。けだし絶妙の見せ方である(――なお、このくだりの会話中では、奥山村の温泉旅館のことも話題に挙がっている。第一作の舞台である)。
 これと同様の趣向で、ミニイベントや通常会話の中にもそれと思しき話題や単語が挙がっている。姫がモブ出演していたTVドラマ『愛情の無い愛憎は小僧』は恒例のシリーズネタであるし、姫EDに登場する探検家の緑山五月は、もちろん『アルフレッド』の登場人物である。ママの胸のプリントに「issekisancho」とあるのが読めるが、これはどうやらヴァルキルの表の顔「一石三鳥株式会社」が服飾業界にも進出してきているようである。
小ネタの連関。アイテム群の中にも細かな連関が多数――従来と比べて異例の密度で――見出される。以下単純な列挙になるが――『プラトニックドラゴン』と題されたアイテム「BL小説」の表紙には、『巣作り』のブラッドとマイトの姿が描かれている。その著者名「コスモスタイガー」は山春日霧姫のペンネームである(『真昼』依頼書882番の即売会イベントを参照)。同様に「小説」は、表紙に『LJ』パッケージ画像を用いた、小説版(?)の『LEVEL JUSTICE』である。「エロ本」の表紙は『アルフレッド』から(鷹ノ森咲夜のイベントCG)。「立派な絵画」はカナード市街を俯瞰眺望した絵(『ブラウン』背景CG)。「普通の絵画」はルシアン港の背景CG(『海賊』)。「下手な絵画」は例の「くま」のCG(――使われているのは、『LJ』の怪人のCGではなく、『葵屋』の「森の熊さん」の立ち絵CGである)。「ビール」には『LJ』の怪人ユニット「キャラ」。心和む「美少女フィギュア」は抜刀ポーズのラブリーホワイトスター(『LJ』)。「美少女ポスター」は『巣作り』パッケージ画像。「プラモデル」は『LJ』の幸福王子(――おまけムービーといい、その役回りに比して露出し過ぎであるが)。「限定テレカ」はリュミス&ティエのテレカ。「ビーチボール」にはコゾーンの絵のプリント(『LJ』)。
 そのほか、会話テキストの中にも旧作を想起させる台詞がいくつもある。例えば喫茶店「ホーネット」(『ブラウン』)、「マイト」(パパとの会話)、「ロベルト」(メイドとの会話、パパとの会話)、野球チーム「タイタンズ」(メガネとの会話。『LJ』のジャガーズやサイクロプスと同じリーグなのだろうか)など。


 ――『Dancing Crazies』について――
 記念すべき十作目となる『Dancing Crazies(ダンシング・クレイジーズ)』(『DC』)は、ほとんど『真昼』の続編と呼んで遜色ない程度に密接な内容的連関を持っており、また懐かしき『うえはぁす』からの再登場キャラクターたちもいる。『真昼』との関連については一々指摘しないが、作品の舞台は『真昼』と同じく加来山府(現代日本)であり、『真昼』本編の数年後頃とおぼしき「何でも屋」の活躍にも再び接することができる(――ちなみに援護攻撃の人工衛星のアニメーションは、大阪市中を指しているように見える。おそらく城東区放出の辺りを狙っているのであろう。参考リンク)。とりわけ興味深いのは、ルネリアの正体の正体が明らかになる点であろうか。また他方で、本筋にはさほど関わらない形ながら、クリスとエリオットも再登場している。状況からして『うえはぁす』本編後であろう。SLGパートで、特定依頼を達成したのち支援者として使えるようになるのは、『真昼』と同様である。
 その他、旧作との関連としては以下のようなものがある。『葵屋』に関しては、「株式」欄に「葵屋温泉」「ホテル逢坂屋」「逢坂屋食品」といった会社が存在する。また、恒例の温泉旅行イベントが発生し、また宮子の「キツイ母親と、姉二人」が健在であるらしきことも窺われる(アナザー07番)。『アルフレッド』に関しては、リンテールとリリカが同族(死神族)である。「おまけ」コーナーのクイズによれば、『DC』時点でリリカは死神族の代表になっているらしい(――ちなみに、リンテールと姫子の関係は、サフィールと咲夜の関係と同じ原理で行われているものと思われる)。『LJ』に対してはいくつもの関連が見出され、例えば狂犬&闘犬カップルが買ってきた奈賀島府の土産品は「一石三鳥菓子」(ヴァルキル=一石三鳥株式会社)であるし、株式欄の「ラバーズ」「狂水」「G1」「エスクール」もそれぞれ『LJ』のマップ施設であった。ウェイトレス支援者の衣装も、『LJ』の敵ウェイトレスのものと同じであるように見えるし、美雪は葉月と同じロータス学園の卒業生である(テニスイベント)。『南国』については、「数年間、無人島で暮らしている人が戻ってきたんだって」という噂話がある(「情報」コマンド時の零ランダム会話)。
 その他の固有名詞など。「王手川」系列(各所に。山春日に対抗するコンツェルン)。「リャナンシー」の名(「出題者」の会話、アナザー09番)。「林海屋」(クリスたちのイベントから。「何でも屋」に連絡する窓口)、「ジャガーズ」「タイタンズ」(零や美雪の会話から。プロ野球チーム)。「花村出版」(株式欄から。『真昼』の中橋佳奈美が所属する会社)。
小ネタの連関。恒例の「愛憎」シリーズのTVドラマは、今回はいつの間にかパート34。『LJ』当時のパート14からかなり進んでいるが、深く追及すべきではなかろう。「変わったアスパラガスの食べ方をするらしい」(賞金首132番「普通の女」)も恒例である。「サイザー」という賞金首(001番)が出現する。『海賊』の登場キャラクターとの関連は不明だが、その名前とともに、最強の隠しボスとしての地位も継承している。『ブラウン』との関連では、「株式」欄に「ホーネット設計」株がある。『巣作り』については、葵屋イベントで鈴が着ているのがクーと同じ執事服である(――本編からは外れるが、おまけムービーのコスモスタイガー著「プラトニック」シリーズの件もある)。支援者「棒聖レイリン」が鳥族少女と同名なのは偶然なのかどうか判断しがたい。
 なお、アイテム「タバコ」にキャラ社のロゴマークが入っているほか、株式欄には「笠懸建設」「おじょり通信」「TOM造船」「TOM運送」(スタッフ名)がある。


 ――『グリンスヴァールの森の中』について――
 十一作目となる『グリンスヴァールの森の中』は、三度目の西洋風中世ファンタジーである。今作では、キャラ社作品における作中世界の全体構造及び歴史について詳しく語られたことが、とりわけ注目に値する。詳しくは別項で扱うが、ここではとりあえず、「神々」が存在する(した)こと、そして彼等によって創造されて天界と魔界と人間界が存在すること、それらは精霊たちの力によって維持されていること、を確認しておくにとどめる。
 それぞれの部分世界に関して。天界については、命神族を中心として八部族(光神族、闇神族、焔神族、風神族、地神族、水神族、樹神族、雷神族)によって統治されていると、神話研究所の学園生が語っている。これらの種族名は『アルフレッド』でルミーゼが語っていることとも合致するので、事実と取ってよいだろう。ちなみに、ルミーゼは炎神族であり、クーチェルはメルエと同じ光神族である。他方で魔界に関しては、旧作との関連は希薄である。第三に人間界について。今作で展開されているこの世界は、いくつかの固有名詞など(後述)から、『ブラウン』及び『巣作り』と同一世界にあるものと思われる。空間的には「東方」が存在するとされるが、これも『ブラウン』などと同様である。また時間的には、いわゆる「未来END」において、のちに現代世界相当の状況へと発展した様子が描かれている。
 個別の関連性については、以下のようなものがある(以下列挙)。ドラゴンの生態及び歴史について(メルエ食事イベント。神話研究所会話。魔法学校舎の「学園の様子」)。レナが召喚してしまった「魔王の身体の一部」(明言されてはいないが、おそらく雪継が捨てた魔力の一部、通称「ウニ」であろう)。戦場魔法の開拓者、「完璧なる黄金」のメイア・クルセイダ(上記レナイベントでの歌焔発言。『巣作り』ではルクル−ドゥエルナ関連のイベントで言及される)。戦場の魔法使いたち、ジェス・トロットロード、セラ・エンジェルスカイ、ベイモン・クラリティーズ(魔法学校舎の「学園の様子」。クイズ選択肢。これらもルクルが挙げていた名前であり、もちろんセラは『ブラウン』のヒロインでもある)。シャルの娘たち(アルフレッド学園の精霊は、実際に作中で「時計塔の女王」として登場していた。時間操作能力は母親ゆずりなのだろう。ロータス学園は、『LJ』の葉月や『DC』の美雪の通っていた学園。椚葉学園は今のところ不明。ちなみに、『DC』の葉木崎唯が通っているのはシリウス学園、『南国』のドクター前田が勤務する学園名は不明)。ファットデビル(ニキの洞窟探索)やデーモンスピア(メルエ「アナタのハートにデーモンスピア♪」)といった魔物。対魔物戦闘に登場する魔物には、のちの「ウルフ」とおぼしきものがいる。本編外ではあるが、「おまけ」シナリオにニキとユメが同郷であるとする描写がある。これは正式な設定と見るべきかそれとも他愛のない「おまけ」と見るべきか解釈が分かれるだろうが、私見では同郷設定は受け入れてよいと思う。
 今作の葵屋に登場するのは、仲居のシズのみ。他作品との関連性は示唆されていない。
小ネタの連関。謎解きの好きな旅のパン職人ウィットニー(メルエ食事イベント。専門校舎の「学園の様子」)。アスパラガストーク(メルエ食事イベント、ヴィヴィ会話イベント、シャル学園祭イベント)。施設「不思議空間」は、マスコットキャラクターの「キャラ」(『LJ』以来の伝統で、腹部には「芸夢命」と書かれている……筈)。「キャラ」は、学園上空を浮遊している時もある。
 余談ながら、『真昼』から『グリンス』まで、ちんじゃおろおす氏の「あらいぐまちゃん」劇場が作中作としてレギュラー登場し続けていた(ヴォイスキャストはいずれも宇佐美桃香氏)。いずれも本編との関係は希薄で、相互の関係も無きに等しいが、いわば本編の箸休めのような掌編として楽しめた。
 さらに本編外コーナーには、クイズ選択肢の「エルブワード王国」や、おまけムービー「暗黙の了解」におけるロベルト・カーロン登場もある。ところで、「おまけ」でBL関連のネタが用いられるのは、『巣作り』以来もはや伝統芸として確立しつつある。
 なお、ブレッドワード商国という名前があるが、通貨「ブレッド」の起源か何かに関わる土地なのだろうか。それとも、因果関係が逆で、商業国家であるがゆえにことさらに通貨の名前を冠する国名をつけたといった事情でもあったのか。また、「ブレッドワード」「エルブワード」という名称も、ただの偶然とは考えにくい。関連性を示唆するというよりも、作中世界の広がりを想像させるネーミングであるが、興味深い。


 ――『王賊』について――
 第十二作『王賊』においては、他作品との関連性を示唆するものは控えめであり、言及された場合も、共通世界であることを前提とすればごく自然なものばかりである。通貨ブレッド。獣人族(オオガー族、ウルガー族)。竜族と天界、魔界との大戦争(飛竜創造の起源)。竜族の性質(雌の方が強いなど)と、東方の竜神族(ムスト。月池家と関連するのか?)。各種のモンスター(『巣作り』から)。ギュンギュスカー商会(「謎の声」の売り込み)。レグルリア王国(『王賊』の舞台の西方にあるとされる)。メイア・クルセイダ(おまけシナリオ)。魔法使いに召喚された触手の魔物(――これも雪継が捨てた魔力の塊であったと思われる)。そしてもちろん葵屋(――今回の仲居は立花。移動魔法の描写は『ブラウン』にもあったもの)。
小ネタの連関アスパラガスの変わった食べ方講座(地域活動時)。デーモンスピアの歌(葵屋イベント。元はメルエが歌っていたもの)。ダンジョン探索時の様々な発言(――明らかに『巣作り』を意識させる)。パン屋のウィットニー(リディアが街で地域活動)。ロベルト・カーロン(おまけシナリオ、おまけムービー)。「南の島でラムラム」(戦後のエルト兵士たち)。カードゲーム(『巣作り』のキャラクター)。『愛情の無い小僧は愛憎』(地域活動時)。おまけムービーでは、恒例の『プラトニックスクール』と、飛行シャルがある。


 ――『Wizard's Climber』について――
 第十三作『Wizard's Climber(ウィザーズ・クライマー)』においては、作中世界の共通性を強く示唆する人名がいくつか現れる。とりわけ魔法使いメイア・クルセイダと、最強竜リュミスベルンである。メイアは『巣作り』で初めて言及されて以来、この世界における伝説的魔法使いとして度々語られてきた存在だが、本作では《ローンズ → メイア&ルーン → グレイトシックス → セリス/イエル》という師弟関係が明言され、また彼女による戦場魔法開発が十数年前だと語られたことにより、彼女が活躍した時期も一定程度明らかにされた(――それゆえ、本作は他作品よりも時間的に先行している可能性がある)。「完璧なる黄金」という呼び名も、彼女個人に対する称号ではなく、彼女が所属した冒険者チームの名称であることが明示された。竜族リュミスベルンについては、「最上の塔」を5度目に制覇した時に、古代竜リュベルクローネがその名前を挙げる。「絶対に、絶対に、絶対に戦わない方が良い」相手だとして。ただし、これら双方の記述から、『巣作り』との時間軸上の関係について問題が生じているが(→後述する
 これらのほか、明示的ではないが、旧作群と同一世界であることを窺わせる記述がいくつか存在する。とりわけ、さきのリュベルクローネの会話の中では、リュベルマイト(雄の古代竜)、ライアネ(雌の古代竜)、ブラッド(雄の混血竜)とおぼしき存在に触れられている。 魔法学習中に言及される「竜殺しの剣」は、『巣作り』で実際に登場した武器である。恒例の葵屋イベントで、移動魔法の掛かったチケット(非常に高額だとされる)を使うのも、『ブラウン』以来の定例である。  さらに、モンスターの多くが、旧作から継承されている。具体的には、ホーンちゃん、トウフ君、冥土さん、白ヘビ様、レイリン、クマンは『LJ』の怪人が初出であり、さらに『巣作り』にもエキストラユニットとして登場していた(――ただしクマンについては、厳密には『葵屋』が初出と言うべきであり、またレイリンは「鳥族」から「天界の住人」へと設定変更されているが)。他方で銀狐は、『巣作り』の作中作に登場したキャラクターである(――ただし、ほんとうに同一人物であるのかは不明)。また、通常モンスターのうち、ベト、ダークマン、モエルモン、ナメッド、ダークマジシャン、ファニードラ、暗黒騎士、漆黒騎士、イモモ、ミックス、ファットデビル、ハラミボディ、ハンマースイングは、『巣作り』の迎撃ユニットが初出であり、かつ『王賊』の魔物部隊としても登場していた。「炎の精霊」「暗黒球」も、『王賊』に敵ユニットとして登場していたのと同じものだろう。また、「闇の魔法勉強」アニメには、ダークマン(『王賊』の忍型ではなく『巣作り』の岩型)や、フェイス(勉強失敗時。『巣作り』が初出)を召喚するものがある。なお、ハンマースイング「ハンマークラッシュ!」、ファットデビル「貴様のハートを貫いてやる!」、プク「また殺すのかー!」など、戦闘時台詞には、旧作を意識したような台詞もある(――ファンサービスの範疇であろうが)。
 その他、魔法の体系的説明、竜族の生態、天界と魔界の反目ぶり、精霊の存在(アイテム「森の精霊の弓」)、魔法詠唱の早口訓練、「東方」の存在など、基本的な世界像は『ブラウン』『巣作り』『グリンス』『王賊』と完全に一致している。天界と魔界が大戦争を行ったのち現在休戦状態にあるというのは、『アルフレッド』でも語られていた。魔力の授受が粘膜接触によって為されるという設定、魔力が大量に蓄積されると人体(精神)に危険な影響が生じるという設定、逆に魔力を大量に奪われると記憶に混乱が生じるという描写(マーコルネールイベント)も、まさに『アルフレッド』で使われていたとおりの設定である。
 ただし、以上のような関連事項にもかかわらず、旧作の各舞台との空間的時間的関係はほとんど示されていない。たとえば本作には多数の国名が挙げられているが、旧作との関係を示すような手掛かりは無い。
小ネタの連関。 「読書」中にセリスが読む『クレス家の野望』シリーズは、『王賊』でも挙げられていたタイトルである。同様に、彼女が読む『マックラーの屍』は、前作『王賊』の激戦地となった「都市マックラー」であろう(――ただし、この箇所の記述を根拠に『王賊』が『Wizard's』に時間的に先行すると断定するのは早計である)。ラズロックの家に飾られている絵画(CG:No.003-005)も、このマックラーの背景CGである。ファンタジー系作品に皆勤となるパン屋ウィットニーについては、今作ではイエルの台詞の中で名前が挙げられているのみであり、具体的なことは示されていない。さらに、葵屋イベントでセリスたちが歌う「貴方のハートにデーモンスピア」は、『グリンス』の邪悪な歌姫メルエの持ち歌であった。
 そのほか、作中世界とは直結しないファンサービスとしては、恒例のアスパラガスの食べ方が挙げられる(イエル、料理大会)。また、カニ料理も頻出の話題である(リュミス、『南国』アイテム、『グリンス』の「学園の様子」、ルティモネ、ヴィオラ)。コメカミを圧迫するお仕置き(ダイ=チカ=メイキュ攻略後)も、『巣作り』の連隊長を思い出させて微笑ましい。麻雀イベントは、『巣作り』及び『グリンス』のおまけシナリオにもあったが、今作では本編中イベントに昇格しているセリスの髪留めに見られる尻尾の長い猫は、『DC』で美雪が使用しているコップと同じデザインである。
 旧作プレイヤー向けのネタは、各種の「おまけ」にも見られる。第一に、クイズの選択肢として現れるいくつかの固有名詞(奈宮皇国、ヴィスト王国、「銀」など)。第二に、英雄の塔の管理人。名乗っていないが、明らかにキャラ社マスコットキャラクターの葵(仮)ちゃんである。ただし、『ブラウン』で登場した時の担当声優は宇佐美氏であったのに対して、本作では(クレジットされていないが)渋谷氏に代わっている。そして第三に、おまけムービー。最初に名乗っている兵士ジョルジュ・ブラストマイアは、『巣作り』のおまけシナリオに登場したサブキャラクター。あのロベルト・カーロンの同僚である。第四に、『リリカルプリンセス』の表紙に描かれているのは『王賊』のアルイエットとリディア。著者名は一部判読できないが、「コスモスタイガー」(=山春日霧姫)以外に考えられない。


 ――『DAISOUNAN』について――
 第十四作『DAISOUNAN』は、西暦212X年の無人惑星を舞台とする。時間的懸隔のせいもあり、他作品との間に世界設定上の実質的なつながりはほとんど無い。ただし、作中で惑星間航行船「エルリッヒ・F・フローミスト」の命名元となった同名の人物はアルフレッド学園の教師であり、それゆえ『アルフレッド』と同一世界の、のちの時代だと考えるのが自然だろう(――ただしこれは元々は「劇レボ」由来のキャラクターなので、作中世界から外れたエキストラキャラクターに過ぎないと見做す立場もあり得る)。また、恒例の温泉イベントでは「葵屋温泉」の話題が出ている(――「レクリエーション17」のイベント)。この時代にも温泉旅館葵屋は実在しているようである。なお、燃料素材の「カスガ〜」のネーミングは、『真昼』『DC』の山春日家を連想させるが、これについて作中での明確な説明は無い。なお、『LJ』に登場した宇宙人も、人類と交配可能であったことから、おそらくはリーファ種に属する種族である。
小ネタの連関。旧作の内容を示唆するテキストとしては、以下のものがある。日和と頼子の会話で言及される書名『クレス家の野望』は『王賊』『Wizard's』でも挙げられていたし、『ゴースティアル』は『うえはぁす』のゴースティアル王国を想起させる。「愛憎小僧」シリーズも、恒例の小ネタである(――「愛憎」は、勘九郎と凪子の会話でも言及されている)。凪子が子キリカブに命名した「グリアルベルモルモロー」は、『グリンス』の大精霊の名前である(――たしかに立派になりそうな名前だ!)。日和のペンネームの一つ「ベイモン」は、『ブラウン』以来何度も言及されている大魔法使いの名前。「パン屋のウィットニー」の話もエンディングの中で触れられる。ただし、これらがソフトハウスキャラ世界における同一の実在的存在だと考えるのは無理がある。作中世界のリアリティとは無関係の、旧作プレイヤー向けのサーヴィス(小ネタ)にとどまるものと思われる。
 その他の小ネタ。恒例のアスパラガスネタは、今作では合唱会イベント(「レクリエーション02」)と、頼子とサイリのエリア会話にある。会議での頼子の発言「この意見は輝いているわ」は、『南国』で同じく会議中にメガネが頻繁に口にする台詞。作中に釣りイベントがあるのも、恒例となっている。
 作中作では、『プリティレッド』編に登場する冥将ヤルンダは、『LJ』のヴァルキルに所属しているという設定のようである。龍型怪人アーネウスは『LJ』本編に登場したキャラクターである。ヤルンダに策を授けた「本部付きの博士」は、明言されていないがDr. ヘルナイトであったと想像しておきたい。『風紀委員長』編は、アルフレッド学園での物語であることがコメント上で明言されており、制服もたしかにアルフレッド学園のものである(――ただし、アルフレッド学園は女子校であった筈だが、この作中作には男子学生が登場している)。また、委員長が手にしている雑誌の表紙には「月刊王賊」と書かれている(――表紙のリディアイラストは、サークル珠手箱で制作された『王賊』原画集のもの)。さらに、『触手戦隊』編の触手「ジョニー」と「マイケル」は、『Wizard's』の触手「ジョニー」「マイク」に由来すると思われる。
 おまけ「クイズ」では、回答選択肢に以下のものがある。「一石三鳥社」(『LJ』で主人公たちが所属する組織)。「逢坂ホテル」(『葵屋』でヒロイン静香が経営するホテル)。「逢坂」(同じく)。「木下」(『南国』の主人公の名字)。「メッツァー」もあるが、他社(triangle)作品の有名なキャラクターを念頭に置いたものかどうかは不明。


 ――『忍流』について――
 2009年発売の第十五作。舞台は、六つの島から成る「東島国」(東国)。時代は「戦国」(※公式サイトの記述による)。作中の地理や固有名詞(地名や人名)は現実の日本及び日本語と似ているが、けっして同一ではない。いずれにせよ、これまで扱われていなかった舞台設定であるため、旧作のキャラクターたちが実際に再登場することは無い。しかし、伝聞等のかたちで間接的に言及されている箇所がいくつかある。その一、獣人族について。久留滝家は獣人族のシバ族(柴犬?)に属するが、これは「オオガー族の支族」だと述べられている。その会話の中ではウルガー族とゴールズ族という名前も挙がっている(――前者はネイの種族。後者は初出)。その二。恒例の葵屋イベントで、本店から来る筈だったという人物はおそらくお宮であり、また「大陸からやってきた狐と兎の物の怪」は『真昼』の狂歌と楽玉のことであろう。その三。任務「龍退治」に際して言及される小流(東海龍王の一族)は、『海賊』の登場人物。なお、会話の中では「龍族が天世や魔界と戦争」を行ったのは「何百年」も前であり、しかも「その戦いの生き残り[の龍]が生存している」と語られている。これらのことから、『忍流』世界は『葵屋』『真昼』『海賊』世界と同一であり、さらに西洋中世ファンタジー的世界系列ともつながっていると考えられる。
 間接的な関係。水蓮の実家は奥平家であるが、これは『真昼』の「なんちゃって忍者」こと奥平鈴と同じ名字である。しかも水蓮の本名も「鈴」なので、同姓同名になってしまう。両者が遠い血縁関係にあると想像するのも一興だろう(――なお、『真昼』で鈴役を演じたのは山崎ことり氏。『DC』での鈴役は神崎ちひろ氏。『忍流』の水蓮役は青山ゆかり氏)。
小ネタの連関。その他の小ネタ。特別任務に「パン屋のウィットニー」と「愛の無い愛憎は小僧」(第一集から刊行されている)がある。後者の任務実行中テキストには、書物『クレス家の野望』も挙げられている。アスパラガスは、幕間会話等で登場する。縁日CG(no. 400)では、コゾーンマスクのお面が描かれている。シルヴィアを戦慄させた「伝説の苺プレイ」は、『王賊』のリディアのイベント。幕間会話では、降魔衆がデーモンスピアの歌を歌ったり、平木衆がイングウェイばりに「イエスッ、平木衆!」と叫んだりする。平子衆忍たちの会話「参上」「見参」「推参」は『DC』の何でも屋登場シーンの再現であるし、水蓮の「説明」要求にアルイエットを想起したプレイヤーも少なくないだろう。大名家の中には「倉原家」「山県家」があり、それぞれ『DAISOUNAN』の清倉原家と『真昼』の山県一義を連想させるが、ただの偶然だろうか? 配下ユニット(中忍)の中には「勘九郎」「葉月」「晶(※ただし女性名)」がいるが、こちらも偶然の範疇だろう。作中に「熊(クマン)」が登場するのも恒例である。
 おまけコーナーについて。おまけシナリオの中に、『Wizard's』のジャッジマンを意識したテキストがある。クイズの選択肢にも、旧作を想起させるものが含まれている(――「逢坂」「西園寺」「林海屋」など)。


 ――『BUNNYBLACK』について――
 2010年発売の第十六作。舞台は、トライリース王国領内の「魔王の森」の迷宮。時間的空間的設定ははっきりしないが、中世ファンタジー的世界に含まれると考えられる。旧作との関連で特に重要なのは、魔力の動き、竜の巣、ギュンギュスカー商会、モンスターたちの四点。(1)第一に、天界と魔界が人間界から魔力を除去しようとしているという状況は、『アルフレッド』の描写と一致する。また、魔力が人体に与える影響、魔力の蓄積から魔物が生まれるという記述、魔法使い協会の存在なども、これまでの同社作品群における設定を受け継いでいる。(2)第二に、本作で訪問することができる「竜の巣」は、『巣作り』におけるブラッドの巣である。ブラッドがすでに結婚していることから、『BB』の作中年代は『巣作り』よりも後であると考えられる。ラキアとの会話で説明される竜の生態も、旧作を踏襲している。(3)第三に、本作にもギュンギュスカー商会が登場している。ラキアから「先輩」と呼ばれている人物は、『巣作り』のクーである(――上記「竜の巣」のイベントに実際に登場する)。(4)最後に、本作に登場する魔物(モンスター)たちの種族も、その多くが旧作由来である(――『巣作り』『王賊』『Wizard's』のモンスターたち)。ただし新規登場の種族も多数存在する。
 その他。(1)トライリース王国の人間界における地理は不明であるが、本作にも「東方」文化の存在が示唆されている(――巫女、侍)。(2)魔界の獣人族としてタイフル族が登場したが、その説明の中でオオガー族にも触れられている。(3)魔界を初めて統一した大魔王ガイエス、およびその配下の魔王アイシエスにも言及されている。アイシエスは『アルフレッド』の夏野雪継の父親であり、またガイエスの名は『ブラウン通り』でアイテム「官能的なH本の八巻」のコメント欄にある。(4)「精霊の斧」「精霊の帽子」「精霊の篭手」といったアイテムが存在する。ここから、太古の精霊が(少なくとも神話伝承として)この世界に存在することが知られる。(5)温泉イベント。この温泉地は魔王の森の中に開かれており、「かなり強い魔物」が管理していると述べられている。ただし、「葵屋」とは明言されていない。(6)三尾の猫。洞窟内で、人語を喋る妖猫が登場するイベントがある。ただしこちらも、他作品との関わりは明示されていない。
小ネタの連関。アスパラガス、パン屋のウィットニー、『クレス家の野望』はすでにお馴染みである。そのほか、二周目以降のプレイでは配下ユニットとして「夜月衆」を雇用することができ、また、スキル「囮」の効果としてセリスを召喚することができる。ヒロインの胴体を壁に埋める拘束(火夜)、ヒロインの直腸への放尿(『LJ』以来)、「貴方のラキアはここに居ますよー」(クー)などもある。


 ――『雪鬼屋温泉記』について――
 2011年発売予定の第十七作。詳細不明。



2.全体にわたる関連性の展望

 ――温泉旅館「葵屋」――
 連綿と受け継がれているキャラ社の《伝統》の代表例が、「葵屋」である。デビュー作『葵屋まっしぐら』以来、各作品には温泉旅館「葵屋」が存在し、しかもそこに登場するキャラクターたちにはいくつかの設定上の関連がある。
 各作品での扱い。『うえはぁす』にはゴースティアル王国領内に隠れ「葵屋」があるが、ここに登場する葵小宮は、ブランド処女作『葵屋』のヒロインお宮の娘(四姉妹の四女)だということになっており、また月池親子(大姫、小姫)も『葵屋』由来のキャラクターである。また、第三作『海賊』には「葵屋島」なる島があり、そこにいる女将の小流も、(おそらく)小姫の縁者である。つづく『真昼』では、ヒロインの一人に葵宮子が登場するとともに、「葵屋」北岩村支店に葵秋風が登場するが、この二人もお宮の子(秋風が二女、宮子が三女)である。『アルフレッド』は、修学旅行イベント以降、春炎(四姉妹の長女)のいる「葵屋」に何度も通うことができる。さらに『LJ』では、宮子たちが出迎えてくれる「葵屋」に行くことができる。『南国』にも、葵屋跡らしき場所が見つかるイベントがあり、その際に奥山村の葵屋旅館(つまり第一作の舞台)にも言及されている。『DC』にも、温泉旅行イベントがあり、これも宮子たちが応対してくれる。『忍流』でわずかに言及される人物も、おそらく(若き日の)お宮であろう。なお、西洋中世ファンタジー的世界を舞台とする作品にもそれぞれ「葵屋」イベントがあるが、こちらは他作品との関連が希薄である。特に『BB』では、「葵屋」という名前自体が現れていない。
 人間関係。これらの葵屋イベントを見ていくと、葵屋に取り憑いた妖猫一族の大きな関係が見えてくる。もう一度まとめてみると、『葵屋』のヒロインお宮(銀毛流黒桔宮三尾ノ猫ぎんもうりゅうくろきつのみやさんびのねこ)を母として、長女の春炎(おそろしい姉)、次女の秋風(三女の宮子とは双子の姉妹)、三女の宮子(加来山府の妖怪たちの鎮守大将になる)、末娘の小宮(『うえはぁす』の葵屋に登場)の四匹の娘がいるということになる。さらに、娘たちが「葵」姓を名乗っていることから、父親は『葵屋』の主人公葵恭介であろうということも判る。ただし、長命な妖猫なので、これらの事実から作品間の時間的関係を推測するには至らない。また、『葵屋』のお宮EDでは二人の間に「恭太郎」と名付けられた子ができたことになっているが、それ以降一度も言及されていない(――恭太郎には妖猫の血が発現しなかったのか、それともお宮EDが「正史」として固定されないためか)。このように、曖昧さを多分に残した関連づけであることも、踏まえておくとよいだろう。
 ともあれ、記念碑的第一作の名を冠しつつ時間と空間を超えて永く繁栄していく葵屋の有様と、そこに棲まう者たちの人間模様(人類ではないが)は、キャラ社作品史に編み込まれた縦糸の一つである。システム自体が「System Aoi」と命名されている点や、美しいサックスブルーがキツネ色のアクセントとともにブランドを象徴する一色として使われている点、同社のマスコットキャラクターに「葵」の一字が冠されていることも含めて、つくづく葵屋はキャラ社のシンボルなのだと感じられる。


 ――通貨、言語、魔法――
 その他、各作品に共通する諸要素に、以下のようなものがある。
 通貨。それぞれの作中世界で使用されている通貨の単位は、以下のとおり。現代日本(に相当する状況)を舞台とする『葵屋』『真昼』『アルフレッド』『LJ』『南国』『DC』は、いずれも「円」(――SLGパートで用いられる場合もあれば、テキスト上のみの場合もある)。『うえはぁす』の舞台であるゴースティアル王国(現代ヨーロッパの小国)の通貨はEN(イエーン)。他方で『海賊』『ブラウン』『巣作り』『グリンス』『王賊』『Wizard's』『BB』では、貨幣単位はいずれも「ブレッド」(しばしば「B」と略記される)。『グリンス』の「おまけ」において、「ブレッド」は「ソフトハウスキャラのファンタジー作品での共通通貨単位」であると明言され、また1B=100円程度の貨幣価値であると説明されている。ただし『BB』時点では貨幣価値の下落が生じていると述べられている。『DAISOUNAN』『忍流』の通貨単位は不明。

 使用言語について見ると、(テキストに表示されるのはすべて日本語だという事実はともかく)、ファンタジー系統の作品群においては、おそらく独自言語(独自文字)が前提とされている。実際に、背景CGなどに書かれている文字は、判読できない(――ただし『ブラウン』の時点では、背景CGの一部に英語「SALE」や日本語「商工会」が用いられていたが)。『ブラウン』には商品「言語辞典」があり、複数の言語圏があることを窺わせている。実際に、漢字を使用している(と思われる)人物及び地域がある(ダルモア王国、香凪坂歌焔、奈宮皇国など)。また、シャルやセリスが関西弁を操っている場面があるので、おそらく方言(つまり言語の地域的なゆらぎ)が存在する。人間族のほかに「獣人族」や「森の住人」が存在するが、使用言語が異なるという描写が無いので、おそらく同一言語で意思疎通している。このほか、『巣作り』によれば人間言語と異なる魔界言語が存在し(フェイの会話、おまけシナリオ)、また『グリンス』によれば精霊語が存在するが、一般には知られていない。
 『忍流』は東国の戦国時代を舞台とするが、キャラクターの台詞には英単語(「トップ」「スケジュール」「コンプレックス」等)が用いられている。他国人(グルム大陸側)との意思疎通に問題は無いようだが、シルヴィアが言語習得の勉強をする描写がある。
 現代世界系統の作品では、妖怪たちが人間と異なる独自の言語体系を持っている(『葵屋』及び『真昼』)が、高度な知性を持つ妖怪は人間の言語も操れる。未来世界(『DAISOUNAN』)の惑星間交流に際してどのような言語が用いられているのかは不明。

 魔法その他のファンタジー的諸力が、基本的にどの作品にも実在する。西洋中世的世界像に立脚する一連の作品は、まさに剣と魔法の世界である。『ブラウン』は魔法が日用品にまで普及した社会であるし、『巣作り』にももちろん竜族や魔族が堂々と存在する。『グリンス』には精霊や魔族が存在し、人間族にも魔法使いや魔法兵といった職業がある。『王賊』においても、魔法がさまざまに用いられている(鍋加熱、戦場魔法、魔法砲、魔物召喚、転移の翼、遺跡の仕掛け、等々)。『Wizard's』に関しては、あらためて言うまでもない。『BB』も同様である。
 他方で現代世界を舞台とする作品においても、魔法や魔力的存在がしばしば出現する。第一作『葵屋』からして、妖怪が跋扈している世界であり、『うえはぁす』も、路傍に突然妖精が現れたりする。『真昼』には鬼や妖狐が関わるイベント(狂歌関連イベントなど)がある。『アルフレッド』ではもちろん魔族たちが闊歩しており、他方で退魔の術具なども実際に効果を発揮する。『LJ』のみはファンタジー色が希薄だが、むしろ特撮のジャンルパロディとしての性格づけがある都合上、やむを得まい(――それでも怪人製作は充分に超科学だが)。『南国』も、正面からファンタジーを志向するものではないが、(缶詰にドライバーを回すと生きたウシに化ける「開発」コマンドの驚異は無視するとして、)島の環境に関する諸設定を中心に、通常の科学及び常識を超える現象が作中でいくつも発生する。『DC』では、妖猫(宮子)と死神(リンテール)が登場する程度である。
 そのほか、『海賊』では「暴君」が思念投影の術を使っており、また魔法使いや呪力アイテムも登場する。『DAISOUNAN』には、魔法ではないが超能力(原住生物たちのテレパシー)がある。『忍流』でも、魔法の存在に言及されている(――幕間会話の一つにおいて、魔法は「今はかなり廃れちゃったみたいだけど、使える人がまだ居る」と言われている)。
 魔法使用の源泉となるのが魔力である。魔力は、基本的には世界中のあらゆるところに遍在しているが、場所と時代によって密度の差は様々である。魔力は生物の体内に蓄積されることもあり、その蓄積量が過剰になった場合や、あるいは逆に蓄積魔力を急激に喪失した場合には、精神に悪影響を及ぼす可能性がある(『アルフレッド』『Wizard's』『BB』)。魔力に対して、詠唱等の手段で働きかけることによってその力を発動させるのが、「魔法」である。また、魔力が大量に蓄積されたところには、魔物が発生することがある(――魔物の性質は、その触媒となった「核」によって決まるとされる)。


 ――竜族と龍族――
 登場作品。西洋中世ファンタジー的世界像を持つ作品群には、「竜」の一族が登場する。『巣作り』では、ブラッド・ライン(混血竜:竜形態時の肌は黄土色)、リュミスベルン(純血古代竜)およびその弟リュベルマイト(古代竜:赤肌)、ライアネ(古代竜)が登場し、またそのほか竜の村に住む雌竜ブリッツ及びミュート、そして竜族の長老たちがいる。『王賊』では、デルロー山の赤い雌竜のほか、ユニットとして雇用可能な竜たち(体表面は黄色)がいる。なお、ムストは東方の竜神族の血をひいているとされる。『Wizard's』では、いくつかのダンジョンに何種類もの竜(竜、白竜、火竜、水竜、雷竜、暗黒竜、古代竜)が登場する。なかでも「最上の塔」の最上階にいるリュベルクローネ(古代竜)は、上記リュミスベルンたちのことを知っている。『ブラウン』では冒険者依頼書の内容として「ドラゴン」を対象とするものがある。『グリンス』にもドラゴンの生態についての言及があり、また「おまけシナリオ」にはニキがドラゴンの巣に侵入するシーンがある。『BB』にも、地砕竜、火炎竜、魔王竜などが徘徊ユニットとして登場する。
 竜族の歴史。各作品の描写をみるかぎり、これらの竜族たちは実際に同一の種族であると思われる(――ただしムストのみは、同族かどうかが不明瞭)。「竜」と呼ばれたり「(エルダー)ドラゴン」と呼ばれたりしているが、どちらも同じ存在を指していると考えてよいだろう。その性質及び歴史は以下のようなものであるとされる。太古の竜族は、非常に長命(数万年の寿命)で、高い知性を持つ種族であった。高度な魔法を操ることができ、また自身の身体も強い魔力を帯びている(――それゆえ竜の体液や眼球などは非常に貴重な魔法アイテムとなる)。二足立位時の体高は20m程度。竜族は傍若無人に世界中を荒らし回っていたが、天界と魔界が結託して対竜族の全面戦争を開始し、その結果、竜族はわずか14血統15頭のみを残して滅ぼされた。残された竜族も異種交配によってその力を弱められ、天界および魔界の監視下にその命脈を維持することになった。その後さらに人間族による執拗な竜討伐運動が行われたため、現在(※)でも竜族の生存個体数は1000頭未満にすぎない。異種交雑によって個体寿命も縮んでいるようである(※――以下、本節で「現在」という場合、基本的に『巣作り』本編の時代を指すものとする)。
 竜族の文化。現在の西方に生息している竜族には、地砕竜、暗黒竜、水氷竜、火炎竜、烈風竜、雷光竜、魔王竜、古代竜の8血統がある。また、雄竜よりも雌竜の方が圧倒的に強い(――戦闘力に関してはほとんど相手にならないレベルであり、最も優秀な雄竜でも雌竜の「平凡以下」でしかない)。しかも男女比が大きく偏っている(――雄1対雌16の比率)。これらのことから、現在の竜族は以下のような生活文化を持っている。(1)同族殺害は「最大の禁忌」とされる。(2)竜族としてのアイデンティティを維持するために純血主義を奉じる(――同一血統内での純粋性も重視される)。(3)子供は、「竜の村」と呼ばれる場所において共同で育てられる。未婚者もそこで生活している。(4)婚姻に関しては、雄竜が巣作りをしたうえで許婚を正式に迎え入れるという手順を踏むのが通例である。ただしこの許婚関係は必ずしも絶対的な拘束力を持つものではなく、究極的には雄竜の側に、巣にどの雌竜を迎え入れるかの選択権がある。(5)一夫多妻関係も(当事者のプライドが容認するかどうかを別とすれば)一応肯定されている。
 その他。(a)竜族以外の生物との交配も一応可能であるが、受胎可能性はきわめて低く、子ができた場合でも竜族の性質を受け継ぐとは限らない(――ただし、混血血統の竜は繁殖可能性が比較的高い)。なお、竜族は人間形態に変身することができるが、この変身能力は上記の異種交配の産物と思われる。(b)竜族に対する天敵としては、「竜殺しの一族」という(人工的に生み出された)人間族が存在した。彼等は、竜族に相対すると竜族の能力を押さえ込み自己の能力を強化する「竜殺し」の呪力を持っている。ただし現在では、この一族はほぼ絶滅している。同様に、「竜殺し」の性能を備えたマジックアイテムも存在するが、これらも現在ではほとんど現存しない。対竜用の魔法も案出されているが、きわめて高度な魔法であり、人間族が発動させることはほぼ不可能である。(c)竜は、自身のパートナーと認めた人間族個人との間に、「竜の騎士」の契約を締結することがある。――以上の一連の設定は、『巣作り』で初めて語られたものであり、そしてそれ以降の作品でもそのまま踏襲されている。
 竜類似の生物。以上のような(真正の)「竜」のほかに、知能の低い下等竜が存在するとされる(ドゥエルナの発言、『BB』の飛竜)。具体的な描写が無いため、詳細は不明である。竜族の中にそのような極端に能力の低い個体が生まれることがあるのか、それとも竜のような外見をしているだけのまったく別種の生物であるのか、あるいは異種交雑によって部分的に竜の遺伝子を持っている雑種なのか。『ブラウン』でジャックを襲ったドラゴンは、この下等竜であったのかもしれない。また、『王賊』には「飛竜」という生物が登場するが、こちらも真正の竜とは異なる種である。

 龍族。現代世界を舞台とする『葵屋』及び『うえはぁす』には、月池一家という龍神の一族が登場する。月池小姫、その母の月池大姫、そして祖父の東海龍王敖広(未登場)がいる。さらに、『海賊』に登場する小流も、のちに『忍流』において東海龍王の一族であることが明言された。この龍族についても、大昔に天界及び魔界と戦争を行ったという、竜族とまったく同じ歴史が語られている(『忍流』)。このことから、東方の「龍族」と西方の「竜族」とは同一種族であると考えてよいと思われる。そして、東方の「竜神族」というのも、実質的に龍族を指していると見做してよいであろう。



3.ソフトハウスキャラ世界の全体構造

 各作品で述べられた上記の諸事実を勘案すれば、各作品間の位置関係について以下のように考えることができる。

 (1)現代世界を舞台とする作品のグループ
 共通点と前後関係『葵屋』『うえはぁす』『真昼』『アルフレッド』『LJ』『南国』『DC』の7本は、同一世界のほぼ同時代――現代世界、もしくはそれに相当する文化状況を持つ架空世界――の出来事だと考えられる。携帯電話やDVDが存在することから見て『LJ』『南国』は明らかに現代の話であり(『LJ』は2003年と明言されている)、また宮子たちの活動状況から見て『真昼』『アルフレッド』『LJ』『DC』の四者は比較的近い時期であろう。ただし、エリオットの手紙に鑑みて『うえはぁす』は『真昼』にやや(数ヶ月ないし数年?)先行し、また緑山五月の件から『アルフレッド』は『南国』に(数年もしくはそれ以上?)先行している。さらに『葵屋』は、お宮が子供を持つ以前の話なので他の諸作品にかなり先行すると思われる。ただし、『葵屋』時点ですでにパソコンやメールが存在するので、疑問が無くはないが(――妖猫は成長が極度に早いのか、あるいはこの作中世界ではパソコン普及が早かったのか、たまたま月池一家が先進的なのか)。そして『DC』での人間関係は、『真昼』『うえはぁす』それぞれの本編後(数年後?)の状況であることが窺われ、また『南国』と同時期である可能性のある記述がある。
 西暦を採用している『DAISOUNAN』(西暦212X年)も、この現代世界グループの延長上だと考えるのが自然であろう(――ただし、小ネタの一部はファンタジー世界のものとオーバーラップしているが)。また『忍流』も、お宮と狂歌(とおぼしき人物たち)のエピソードに鑑みて、この世界のやや古い時代のことと思われる。結局のところ、各作品間の時間的関係については、『忍流』→(400年程度?)→『葵屋』→(十年以上?)→『うえはぁす』→(数ヶ月乃至数年?)→『真昼』『アルフレッド』『LJ』→(数年?)→『南国』『DC』→(約120年)→『DAISOUNAN』という時系列になるのではなかろうか。
 他方で空間的(地理的)関係については、ほとんど情報が与えられていないため、確定困難である。ただし、アルフレッド学園が「関西」に所在することは作中で明言されており、また加来山府もおそらく関西圏に含まれる(――『DC』の支援レーザーは大阪市のあたりを狙っている)。名前が加古川市(兵庫県)を連想させるのは偶然だろうか。奈賀島府の位置は不明だが、マップを見ると南部が海に面している(港区)。名称の類似も考慮すれば和歌山県に相当するかもしれないが、そう考えてもなにか実質的意味が生じるわけではない。『忍流』における東島国の地勢は、日本地図とやや似ているが、同一であると呼ぶのは難しく、疑問の余地がある。結局のところ、これらの作中地理について現実との対応関係を考える必要は、さしあたり無いと思われる。
 この現代世界の状況は、基本的に現実の現代世界とほぼ等しい(――「関西」という地域、またあるいは「葛飾柴又」のごとき地名もある)。ただし、以下のような相違点が認められる。架空の地域や地名が登場すること(「ゴースティアル王国」「加来山府」「奈賀島府」など)。天界および魔界とつながっていること(――ただし基本的には移動できないし、また一般には知られていない)。妖怪や精霊や魔族や死神が実在し、それに伴って妖力や魔力が現実的効果を発揮すること(――ただしいずれも一般には知られていない)。超能力者が実在すること(――唐紅葉月、『真昼』支援者。ただしおそらく一般には知られていない)。現実の日本よりも治安状況が劣悪であること(――犯罪都市加来山府。治安悪化に対抗する特殊警備機構SAFE設立)。地球外知的生命体が来訪していること(――『LJ』。ただし一般には知られていない)。
 なお、『忍流』の時代である戦国時代は、現実世界の戦国時代とおおむね同一のものである。ただし、獣人族が存在する。他方で『DAISOUNAN』の時代である西暦212X年には、人類は本格的な宇宙進出を遂げており、多くの異星文明(人類を含めてリーファ種と総称される)との交流を行っている。人類は統一国家「人類連合」を形成しており、(貴族政類似と思われる)「家」制度が成立している。

 (2)西洋中世ファンタジー的作品のグループ
 相互の接点と時間的関係『ブラウン』『巣作り』『グリンス』『王賊』『Wizard's』『BB』の6作品は、ともに西洋中世ファンタジー的様相を示す同一世界に立脚すると考えられる。とりわけ『ブラウン』と『巣作り』は、時間軸上ほぼ同時代である(たとえばレイラの活動)。そしてこれらは、『グリンス』の作中期間内に含まれている(ニキがブラッドの巣でユメと遭遇するおまけシナリオ。魔法使いセラの噂)。『王賊』の舞台は、『グリンス』の舞台と地理的に近接している(どちらにもレグルリア王国が登場する)が、時間軸上の関係は不明。『Wizard's』に関しては問題がある。一方で戦場魔法発明の時期からみると、『巣作り』に数百年先行していることになる(――メイア・クルセイダによる戦場魔法発明は、『Wizard's』本編時の十数年前であり、『巣作り』本編時の数百年前である)。しかし他方で最上の塔でのリュベルクローネの発言から推測すると、『Wizard's』の時点でライアネは失踪したまま(まだ)帰還していない。ライアネが行方不明になったのは『巣作り』本編開始時点の約50年前なので、ここで時間的関係に不整合が生じているように思われる(――本稿では、『Wizard's』が設定変更したと見做し、『巣作り』と『Wizard's』は近い時代のことと捉えておく)。『BB』には、主人公がブラッドの巣に侵入するシーンがあるが、状況から見て『巣作り』本編よりも後のことと思われる。なお、『グリンス』のとあるエンディングで、クライスたちが現代世界らしき場所にいる描写があるが、これが何を意味するのかは不明。全体としては、数年乃至数十年のズレはあるかもしれないとしても、おおむね同時代の出来事と考えて良いように思われる。
 他方で空間的関係については、これらの作品の舞台となっている各地域は、それぞれ何らかのかたちで人的往来や情報伝達が可能な距離にあると考えられる(――「銀」メンバーたち。ニキとユメ。戦場魔法使いたちの噂、魔法使い協会)。とりわけ『王賊』の舞台となっている地域は、『グリンス』のグリンスヴァール王国と比較的近い位置にある(――双方の作品にレグルリア王国が登場する)。実用的な戦場魔法は軍事機密にも相当する筈だが、その発明はすでに他の諸地域にも伝播している。
 この世界は、政治的には王制国家の下での封建的分権体制が通常形態であり、各国とも内外の政治的軍事的緊張が絶えない。王侯による政治権力のほかに、商工会、盗賊組合、魔法使い協会、巨大学園、森の住人、傭兵団といった有力な勢力が存在する場合がある。王制(君主による単独支配)でないと思われる国家もいくつか存在する(ライバー共和国、ブレッドワード商国、ルウツウル小国連合)。治安維持の手段は、軍隊による見回りであったり(グリンスヴァール王国)、あるいは市民による警備隊が存在したりする(クインズベル王国)。国家間関係は、対立関係や戦争状態を生じることも少なくないが、そうでない時期には平穏な外交関係が形成され、また通商や留学といった相互交流も行われる。
 経済面では、貨幣経済が浸透しているが、おそらく信用貨幣の段階ではない。共通通貨「ブレッド」の実体は明らかでない。国際的な共通通貨として存在しているのか、通貨の単なる代名詞的呼称なのか、それとも作品外在的理由による共通名称なのか。産業構造については、本格的な工業化は経験していないようであり、おそらく中世的手工業が支配的である。有力な大商人も出現しつつある(ゴールドアイ商会、ブルータクト商会)が、いまだ現地の商工会の意向を無視できるほどの影響力は持っていない。固定した生業を持たずに様々な依頼を受けて生活する自由業、つまり冒険者も各地に存在する。個人または少人数チームでの、いわば多目的的請負業であり、輸送や護衛、襲撃、教育、果ては竜退治や魔王退治に至るまで、その活動内容は多岐に亘る。
 技術面では、少なくとも「電気」「電流」概念は一般に知られておらず(発電室、「ビリビリ」)、またおそらく火薬も発明されていない(――銃器や大砲などの武器は存在しない)。その代わりに、ある程度発達した魔法技術が、科学技術相当の機能を果たしている(――照明、軍事利用、拡声器、自動扉、鍋加熱、長距離移動、魔法砲、等々)。ただし、魔法を使える先天的才能が限られているという事情もあり、魔法力の(経済的)価値はそれなりに高く評価されている(――『ブラウン』の魔法アイテムの価格、ルティモネの発言、魔法使い隊の雇用費)。
 文化面では、たとえば書物が稀少だと言われ(『グリンス』冒頭)、また天動説が一般に信じられている(アルイエットの地域活動時発言)が、酒場の品書きが問題なく使用される程度には識字水準がある。少なくとも初等教育はきちんと行われていると思われる(『グリンス』冒頭)。上述のように文字はいずれも独自のものであり、背景CG等に書かれている文面(横書き)はプレイヤーには判読できない。ただし、人間族の名前には、現実世界のヨーロッパ人の名前として使用されているものも多数見られ(ロベルト、ジャック、ヴィヴィアン、リディア、ジョン)、また一部には漢字を使用している者もいる(香凪坂歌焔、一葉、八重など)。暦法も確立しているらしい(1年は7日*4週*12ヶ月=336日?)。
 生活面食生活に関しては、小麦文化(パン中心)のようであるが、焼飯料理なども存在する。ニンジンやアスパラガスなどの現実に存在する食材が描かれているが、他方で架空の食材も出現する(レッサーニワトリ、クヌヌスカなど)。宗教生活はほとんど不明のままである。「神」に対する信仰を司る、職業としての「僧侶」「神官」「神官戦士」が登場する(『巣作り』『グリンス』『Wizard's』『BB』)が、彼等の組織形態や社会的地位はまったく描写されていない。
 なお、「東方」の異文化が存在するが、それがどのようなものであるかは「西方」の住民たちには詳しく知られていない(『ブラウン』の「東方酒」、『グリンス』の東方研究所、『王賊』のムストなど)。
 魔法の存在は、この世界の人々には常識として知られている。魔法を使える魔法使いは、専門の(公的または私的な)教育機関によって育成されている。魔法を使えるかどうかは、基本的には先天的才能に基づき、しかもその才能は比較的稀少である。魔法使いという特殊な能力者は、地域によっては強く警戒されることもあるが、国によっては魔法使いが宮廷で一勢力を形成している場合もあり(クインズベル王国など)、魔法研究に熱心な国もある(ノイル王国)。「魔導師」という称号(?)を設けている地域もある(ドゥエルナ)。魔法の用途は多岐に亘るが、実用的な戦場魔法が発明されて以降、その軍事利用が大きく注目されている(『王賊』『Wizard's』)。魔法の体系については、作品ごとに多少の相違がある。『ブラウン』の魔法アイテムには「炎/水/氷/風/土/闇/光/生/死/金」があり、『巣作り』の魔法スキルには「炎/水/氷/光/(究極)」があり、『王賊』の魔法スキルには「火-炎/水-氷/雷/暗黒/(その他)」がある。『Wizard's』の魔法スキルは「火/水/風/土/雷/闇/光」の7種類に分類されており、『BB』の属性分類も「火/水/風/土/雷/闇/光/(無)」となっている。魔法学の発達形態が、地域によって多少異なっているのであろうか。クインズベルでは、「トークドライブ(通常の詠唱発動)」「スクエアドライブ(魔法陣を使用)」「ペーパードライブ(紙などに詠唱を事前定着)」「キードライブ(魔法アイテムを利用)」という魔法発動方法が分類されている(――アイテムに魔力ごと魔法を定着させておく「キーブレイク」もある)。グリンスヴァール学園では無詠唱魔法も発明されているが、かなり高度な習熟が必要とされている。
 人間族の社会構造に関しては、ほとんどの国には王族や貴族が存在する(――エルブワード王国とエルト王国は、爵位制を採用している)。彼等は城に住まい、政治的支配権を掌握し、軍隊組織を保有し、宮廷を形成し、華美裕福な生活を営んでいる(――ただし租税制度の実状は不明)。身分差別も一定程度存在する(『グリンス』の「貴族館」)。一般人(平民)の基本的な生活形態としては、城塞都市や街、村落を形成し、石造りもしくは木造の建物を建てて集住している。都市の外(深い森)には魔物が出没するので、街道から外れて歩くのは危険だとされ、人的移動もそれほど多くはない(――それでも隊商を組織するなどして交易活動は行われているが)。道路整備状況は、国によってまちまちである。
 亜人種たち。身体能力の優れた獣人族は、森に住まい、あるいは独自に村落を形成している。人間族の都市においても、冒険者の店などでは比較的頻繁に見かける。獣人族による国家も存在する(クルーネ帝国)。彼等は言語的には人間族と同一のようだが、独自の文化を持っている(狩猟生活、生肉食、強い貞操観など)。獣人族は、時として、人間族から差別を受けることがある(マブリ戦役、「旦那イメージ」、貴族娘イベント)。しかし人間族社会の中で高い社会的地位を得ることも不可能ではない(ニキ、ネイ)。獣人族には、複数の種族が存在する(オオガー族、ウルガー族、魔界のタイフル族)。身体的特徴としては、体毛に覆われた大きな耳と、随意運動可能な長い尻尾が挙げられる。また、定期的に発情期が訪れる(ニキ)。寿命については明らかでない(ニキ)。さらに「森の住人」と呼ばれる耳の長い亜人たちも存在し、人間族とさまざまに交流、交渉している(ケーニス、クーク、イングウェイ)。彼等も人間族とは異なる独自の風習を持っているが、人間族との間に敵対関係や差別待遇は存在しないようである。なお、カナードの街近辺には「エルフ」と呼ばれる種族がいるようであるが、森の住人の別称であるのかもしれない。獣人族も亜人族も、人間族との間で交配することが可能である。
 魔物(モンスター)。元々は、魔力が大量に蓄積された吹き溜まりに、魔物が自然発生したもののようである(『Wizard's』『BB』)。ただし、人間界にいる魔物たちは、魔界から召喚されている場合もある(『巣作り』)。彼等の生態としては、高位の魔物などによって魔物たちが組織化されている場合もある(魔王の城、ドラゴンの巣)。ベト、モエルモンからファットデビル、ハンマースイングまで、多数の魔物が各地域に共通して棲息しているが、他方で地域固有種と思われるものも存在する(――『巣作り』のリトルハットやシザービートル、『グリンス』の洞窟モンスター、『Wizard's』のズンバラやミラリン、『BB』のアリトン、ロームスなど)。
 気候と風土について。人々の服装は比較的薄着なので、気候は温暖なのであろう。日焼け描写がほとんど無いので、陽射しはそれほど強くないと思われる。夏場にはしばしば海水浴が行われる(――水着には様々なデザインがあり、紺色水着も普及している)。降雨降雪描写はほとんど無い。

 (3)近世的世界:『海賊王冠』と『忍流』
 『海賊』の世界像は、文化水準及び地理的状況に関しては、近世の黒海周辺を連想させる。作中時点で王制国家間の大規模な戦争が行われており、また海賊が跋扈しているため、治安水準は低い。武器大量取引や人身売買、売買春が行われている、殺伐とした世界である。海戦に関しては艦隊戦術がそれなりに発達しており、また兵器に関しては銃器や大砲が普及している。他方で架空生物(海棲知的生命体「ラスキーノ種」)や魔法使いや幽霊(船)が実在する。『海賊』は、他作品との関係がきわめて不鮮明であったが、『忍流』に小流(龍族)が再登場したことによって、現代世界グループの作品群と同じ世界像に含まれることが判明した。なお、これが中世ファンタジー世界とつながっているとすれば、この時期には人間界から魔力がほとんど失われていると考えられる(――実際には、魔法、魔法使い、カースアイテムなども登場する)。
 『忍流』は、先に述べたとおり、現代世界グループの作品群に接続されている。時代状況として特徴的なのは、魔力及び魔法(使い)がほとんど失われていること、そして大陸から鉄砲が伝来した時期であること。現実世界でいえば16世紀頃に相当すると考えられる。

 (4)作品グループ間の関係
 個別作品の描写を概観すると、ソフトハウスキャラ各作品の全体的関係は、以下のように考えることができる。
 まずおおまかに分類すると、現代世界グループ、西洋中世ファンタジー世界グループ、近世的世界グループの三つがある。これらはそれぞれ、その内部で明確なつながりが存在し、完全に同一の世界だと考えられる。特に現代世界グループでは葵屋一族なんでも屋が作品間のかすがいとなっており、ファンタジー世界グループでは人間族魔法使い竜族(ドラゴン)がつながりを示唆している。
 この三つの世界の関係については、それぞれ別個独立の世界だと考えられる可能性もある。しかし、個々の描写を見ると、これら三つの世界の間には相互につながりが存在する。その根拠としてはとりわけ、ギュンギュスカー家(『巣作り』『王賊』『アルフレッド』)、学園の精霊(『アルフレッド』『LJ』『グリンス』)、龍族/竜族の三つがある。したがって、これまでのところソフトハウスキャラ作品はすべて、同一の単一の世界の大きな架空歴史の中に布置されていると考えることができる。
 それぞれの時間的な前後関係については、単純に捉えて、中世ファンタジー的状況→近世的時代→現代世界→未来世界の順序で理解するのが最も自然であろう。例えば、シャルの娘たちがのちにアルフレッド学園およびロータス学園の「学園の精霊」になるので、『グリンス』は『アルフレッド』『LJ』に先行するべきであるし、また、同じく『グリンス』の「未来ED」において、『グリンス』本編後の遠い未来として、現代世界のような風景が描かれている。
 ただし、全作品を統一的に把握する見解には、疑問もある。例えば、現代世界系列の歴史的過去に剣と魔法のファンタジー世界が存在した(しかもそれは現代世界の一般人にはどうやら知られていない)ということを、読者に納得させうるだけの説明は、今のところ提示されていない。また、細かなところでも、シルビアの年齢のような齟齬も生じている。

 (5)天界と魔界
 さらに、(単一/複数の)人間界のほかに、「天界」「魔界」という二つの世界が存在する。魔界及び天界の構造に関しては、上述()のとおり『グリンス』作中で詳しく述べられている。
 天界について、詳しいことは語られていないが、9部族に分かれた「天界の住人」たちの住まう世界である。彼等は「神族」「天使」と呼ばれることもある。これまでのところ、『アルフレッド』のルミーゼとクーチェル、『グリンス』のメルエ、『Wizard's』のレイリンが、作品中に登場している。彼女等はいずれも背中に白い羽根を生やしているが、天界の住人すべてがこの身体的特徴を有するものかどうかは不明。
 魔界は、夏野雪継(『アルフレッド』)、クー(『巣作り』)、香凪坂歌焔(『グリンス』)たちの世界である。魔界の住人は、「魔族」とも呼ばれる。魔界は、大魔王ガイエスの下に、複数の魔王たち(アイシエス、ギュンギュスカー魔界公爵、フォーゼロッテ、クヴァルなど)によって分割統治されている。魔界の住人には、軍隊組織になぞらえた呼称の序列(クラス)制度があるという(歌焔関連のイベント、ラキアの説明)。また、モンスターたち(イモモや暗黒騎士など)も基本的に魔界の生物である。ただし、魔王たちの統治に服していない魔物たちや、魔王を僭称している魔物なども存在する。
 歴史的経緯。原初に「神々」が存在し、彼等は六精霊を通じて人間界を創造したのち、天界と魔界(およびそれぞれの住人たち)を創造した。天界および魔界が創造されたきっかけは、大精霊グリアルベルモルモローによれば、この世界を「面白く」するためであったという。しかし『グリンス』の神話研究所での会話によれば、神々が二派に分かれて敵対する過程でそれぞれが天界と魔界を創造したと伝えられている。いずれにせよ、天界と魔界は不倶戴天の関係にあり、過去には全面戦争を行ったほどである。千年前(『アルフレッド学園』本編時点から見て)に魔界が初めて統一された際に休戦協定が結ばれ、現在は目立った戦闘行為は行われていないが、しかし互いを敵視していることに変わりはなく、冷戦的反目状態が続いている(『アルフレッド』『グリンス』『Wizard's』)。ちなみに、竜撃退のために天界と魔界の停戦がなされたこともあるという。なお、「天界」「魔界」とは言っても、善悪の道徳的対立とは無関係である。「天界」の住人が人間に対して善をなすとは限らない(実際には人間界を利用しようとすらする)し、「魔界」が人間界に対して組織だった邪悪な企図をもっているというわけではない。
 相互関係。天界及び魔界が、人間界に対してどのような位置関係にあるかはほとんど語られていない。しかし、同一地平上の世界ではなく、なんらかの意味で異なる次元の世界であろうことは、ほぼ確実である。天界及び魔界と人間界との間には(あるいは双方の間を移動する際には)「時間誤差」が生じるようである(――公式サイトの「劇レボ」第129回を参照)。天界や魔界から人間界へ移動することは、一応可能である。しかし、上記の休戦協定に際して、天界の住人や魔界の住人が人間界に侵入したり介入したりすることが原則として禁止され(メルエ発言等による)、それとともに通行を困難にする措置が講じられた(――ルミーゼの発言によれば、天界及び魔界から「人間界に通じる穴」が塞がれた)。それゆえ、人間界へ移動するには、自己の魔力を小さくするか、あるいは人間界の側から召喚されるといった方法をとらねばならない(入江春菜、クー、レナ、セリスなどの発言による)。人間界に存在することを「実体化」と称する場合もある(『王賊』の「謎の声」)が、その意味するところは明らかではない。逆に人間が魔界へ移動することも可能である(鷹ノ森咲夜)が、天界及び魔界が存在することも、ましてやそこへ移動する手段も、通常の人間には知られていない。

 (6)ソフトハウスキャラの公式見解
 ソフトハウスキャラ公式サイト内に設けられているコーナー「葵(仮)ちゃん劇場レボリューション!」において、作品間の関係についてのコメントが示された(2009年7月10日付記事:第139回ソフトハウスキャラ相談室)。それによれば:
イエル
「ウィザーズクライマーのイエルです。
 作品間での時間系列はどうなっているんですか?」

葵(仮)
「一番古いのは王賊。
 一番新しいのがDAISOUNANです」


「時間系列で大事な点は、人間界では魔法の発展、魔力の衰退、鉄砲の台頭、亜人類の減少、宇宙進出。
 天界や魔界では、大戦中か休戦中。
 この点に注視して頂ければ、時代の流れは大体つかめるかと思います。
 転換点は海賊王冠だと思います」
作品の中での証拠ではなく、正式な公式見解だとも言い難いが、制作者自身による発言としての重みがある。これによれば、各作品の人間界はすべて同一世界(複数の人間界ではなく、ただ一つの人間界)ということになる。
 このコメントを前提とすれば、結局のところ、ソフトハウスキャラ作品世界には「剣と魔法の時代(中世) → 近世(的時代) → 現代 → 未来」という一続きの時系列が想定される(――そしてこれは、各作品の描写に照らしても大きな矛盾は生じない)。そうすると、例えば『真昼』や『LJ』の世界は、現実世界と同じ歴史を辿ってきたわけではなく、そのはるか過去には魔法や魔物が実在した時代があったということになる。また、例えば『グリンス』の「未来ED」で描かれているのは、『真昼』『LJ』と同じ世界のことだと見做される。そしてさらに、東方の龍族と西方の竜族とが同族であるという推測も補強される。ただし「葵屋」の起源はいよいよ謎めいているが。


 (7)全体構造についての一仮説
 上記のコメントも踏まえてあらためて全体を整理すると、ソフトハウスキャラ全作品を包摂する作中世界の姿は、おそらく以下のように説明できる。
 神々が、精霊たちを創造し、三つの世界(人間界、天界、魔界)を創造し、それぞれの住人たちを創造した(――人間族やリーエも、そこに含まれる)。三つの世界の間を移動することは一応可能だが大きな制約があり、また移動の際には時間誤差が生じる。はるか昔には、人間界に住まう竜族が、天界及び魔界を含む全世界を相手取って戦った大戦争が生じたが、長い戦いののち、竜族側の敗北によって決着した。また、天界と魔界の間での全面戦争も永く行われてきたが、現在は休戦状態にある。
 当初の人間界には、人間族のほかにも、亜人種(獣人族、森の住人)や多数の様々なモンスターが生息しており、また魔法の力が実在した。中世の西方では、人間族たちは、モンスターの脅威に怯えつつも、魔法を軍事利用して相争っていた。『ブラウン通り三番目』『巣作りドラゴン』『グリンスヴァールの森の中』『王賊』『Wizard's Climber』『BB』がこの中世ファンタジー時代に含まれる。
 近世『海賊王冠』『忍流』の時代)に入ると、人間界のモンスターたちはほとんどいなくなっている(?)。ただし、亜人種(キルン、キャロル&キャロン、ネルル、久留滝家)や異種知性体(ラスキーノ)は、この時期にはまだ公然と存在している。天界と魔界の企図によって、人間界に遍在していた魔力が収奪され減少しつつあるが、この時点では魔法文化や呪力アイテムはまだ完全に失われたわけではない(魔法使いマリカ、呪われた宝箱、忍衆の噂)。他方で科学技術(火薬技術と銃砲製造)が発達してきている。
 現代においては、魔法と魔物と亜人種はほぼ完全に姿を消しており、現実世界と同等の科学的世界の様相を示している。伊奈瀬晶がリンテールの存在に驚いたように、魔法や魔物の存在は人々の常識からは忘れられている。しかし実在しなくなったわけではなく、魔法時代の後裔たち(妖猫、龍族、学園の精霊、階段の妖精など)が生き残っている。『葵屋まっしぐら』『うえはぁす』『真昼に踊る犯罪者』『アルフレッド学園魔物大隊』『LEVEL JUSTICE』『南国ドミニオン』『Dancing Crazies』がこの時代に含まれる。
 さらに未来(西暦212X年:『DAISOUNAN』の時代)には、人間族は宇宙進出を果たし、他の星々の知的生命体(リーファ種)との接触を持つに至っている。
 以上の理解を図示すると、図(PNG画像)のようなかたちになる。



 ――結語:評価――
 このように個々の作中世界を連結する試みは、現在の国内PCゲーム業界においては、なんら例外的なものではない。むしろ、多くのブランドにおいて頻繁に見出されるものであり、それゆえファンサービスの通常形態だと言える。明示的な続編はもちろんのこと、背景CGに旧作キャラクターの姿があったり、同じ名字の一族が登場したり、旧作の出来事がなんらかの形で言及されたり、共通の舞台であったり、ファンディスクでのクロスオーバーがあったり、明確な時系列的連続性があったり、大規模かつ詳細な共通世界設定があらかじめ準備されていたり、……さまざまな形態で、そしていちいち例示する必要の無いほどに数多く、それらの実例を我々PCゲームプレイヤーはすでに知っている。ブランドが一定程度継続的に新作を発売しており、そしてスタッフ(とりわけディレクターとライター)に一定の連続性があり、そしてスタッフが自社旧作に愛着を持っており、そして社風及び作風がそうした遊びを許すものでありさえすれば、旧作への言及はいつでも容易にできることだし、そしてそれは制作者にとっても旧作プレイヤーにとっても好ましい要素であるに違いない。そうした中で、ソフトハウスキャラにおける作品間連関は――最も消極的に理解するならば――他のブランドとの間になんら質的相違をもつものではなくて、ただ単に、旧作への言及を行いうる社風及び作風において単一単独ライター内藤騎之介氏が16作品全てにわたってひたすら書き続けてきたという事実の結果であるにすぎない。ただし、この事実それ自体がきわめて稀なものであり、ライター分担制が普及し(てしまっ)た現在では尚更であるが。単独ライターという稀少な幸福を享受しつつ、しかも継続的に作品を――しかもすぐれた作品を――リリースしてきたゲームライターは、本当に稀である。
 しかし他方で、このように作品間をゆるやかにつなぎ合わせる仕掛けは、作品本編に味付けする《遊び》であるのみならず、一定の積極的な機能をも果たしているだろう。それらはたしかに、上に見てきたように、作品間に強い一貫性を与えるというほど厳密に組み立てられているわけではないし、また気づかなくても個々のゲームを楽しむことになんの支障も生じはしない。しかし、すでに知ったキャラクターの異なった姿を垣間見たり、または彼等が別のところで以前と同じように働いているのに遭ったり、その過去を思いがけず知ることになったりすることは、彼等自身の生活と人生がその世界の中で生身で続いているように感じさせてくれるし、そしてそのことがそれらのキャラクター像にいっそうの厚みを与え、その魅力を増すものになっている(註)。それぞれの作品《世界》についても事情は同様で、作中世界の内的な繋がりと広がりを示唆することで、その固有の実在感(リアリティ)を読者に意識させるし、またそれに対するイマジネーションを刺激する契機としても機能する。このように、文字通りキャラクターをより良く《生かし》つつ、かつまた作品世界をいっそう豊かなものにすることは、振り返って作品本編それぞれを楽しませることにも寄与している。こうした細やかな演出感覚は、それを過度に前景化していない節度まで含めて、たしかな効果を収めていると言えよう。
註) この点で、いわゆる「スターシステム」とは決定的に異なる。キャラ社作品に再登場するキャラクターたちは、そのほとんどが作中世界における固有のアイデンティティを持った唯一の実在として整合的に理解することができる。つまり、恣意的に再登場させられていることが無く、当初のキャラクター設定とアイデンティティはそれぞれきちんと維持されている。それゆえ、ソフトハウスキャラのこの共通世界は、「スターシステム」ではなく「シェアドワールド」の流儀で理解するのが適当と思われる。ただし、唯一の例外として、マスコットキャラクターである葵(仮)ちゃんのみは、自由自在にカメオ出演しているが。
 ただし、けっして誤解されてはならないのは、ここまで述べてきたような細かなつながりは、作中世界のほんの一部分でしかないという事実である。もしも本稿が、キャラ社作品は狭い範囲に閉ざされたマンネリ的世界であるというような誤解を与えたとしたら、きわめて遺憾である。実際にはむしろその逆であり、無数のキャラクターたちのその都度その都度の楽しいやりとりが作品の大半を占めており、各作品の作中世界のイメージはきわめて開放的にできている。旧作との関連性は、それらを活性化させながら、「ソフトハウスキャラの世界」という広く安定した地盤の上に着陸させている、ただそれだけのことである。




 以上のまとめには、不備遺漏が多々あると思われます。何かありましたらご指摘いただけると幸いです。
 ……え? 野暮な詮索ですって? ……まぁ不粋なのは自覚しています。こういうネタは、各プレイヤーが気づいた範囲でこっそり楽しむのが良いのかもしれません。ですが、せっかく見えているネタを無視するのも勿体ないかなと思ったりもします。いかがでしょうか。ただし個人的には、作中世界に対するこのようなアプローチには、単なる《遊び》にとどまらない積極的な構想(作中世界の実在擬制と、マルチアクター性)に深く関わっているのではないかとも考えていますが、それはまた別の機会に書くことにします(→追記:別掲の「リメイク」論の中でいろいろ書きました)。
 なお、上記本文中では言及しませんでしたが、「珠手箱」同人誌を読みますと、スタッフの中では(とりわけ内藤氏の中では)、様々な背景設定が考えられているようです。たとえば緑山五月は茨城焔の姪であるとか、小流は小姫の祖母(つまり大姫の母)であるとか、魔王たちの血統はどうだとか、「神腕のロバート」の職業は神官だとか、『ブラウン』と『Wizard's』はごく近い時代であるらしいとか。ただし、これらはあくまで同人誌上のコメントにすぎず、ゲーム本編中で語られていることではありません。ですから、実際に制作者の心中にそういう背景設定があったとしても、ここでは「それらは本編中では語られなかった」という事実を重んじます。つまり、「それらを本編中では扱わなかった」という意識的な選択があったものと考え、そしてそれを尊重する姿勢をとっています。上記のまとめの中でも、それらを知らなかったものとして書いています。


 (2011年3月4日版)



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